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「夢を持て!」の強要はハラスメント?多くの子どもを苦しめる深刻な問題

大人たちはどう変わるべきなのか

「将来の夢がない」「何になりたい? どんな仕事がしたい? と言われてもわからなくて困っている」と悩む子ども・若者が溢れかえっている――この問題に対して異なる処方箋を示す2冊の本がいま、注目を集めている。

ひとつは高部大問『ドリーム・ハラスメント』(イースト新書)。リクルート勤務を経て多摩大学で事務職員として日々大学生や高校生と触れ合う著者が「夢を持てと強要するのはハラスメントである」と訴え、保護者や教師、企業の人事が若者の夢の内容を値踏みし、干渉することが若者を苦しめている、と語る。

もうひとつは池上彰監修『なぜ僕らは働くのか』(学研プラス)。「こんな仕事がある」と紹介する職業図鑑ではなく、そもそも「なぜ働くのか」にフォーカスし、「働くことの意味・意義とは?」「仕事を選ぶときに軸になるポイントは何か?」を掘り下げた、30万部超のベストセラーだ。

ドリハラ』著者・高部氏と『なぜ僕』担当編集者・宮崎純氏に、若者を夢に悩ませる問題が生まれる背景や、日本のキャリア教育、企業の採用・雇用の課題を語ってもらった。

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日本型キャリア教育の問題点

――おふたりともに日本のキャリア教育に課題があり、それが「子ども・若者に夢(=職業選択)を強要して苦しめている」という認識は共通していると思いますが、まずその問題点から整理できれば。

宮崎 大学までのキャリア教育では「夢を叶える=なりたい職業に就く=大人になる=ゴール」という意識が強く、「大人になること」が「点」で捉えられていてます。

人生は長く、本当は大人も働きながら少しずつ成長していくのに、子どもという「点」から大人という「点」に飛び越えて変わるようなイメージが蔓延している。

就職したあともライフステージや外部環境の変化によって考えや仕事自体が変わっていくという前提がありません。転職の存在すら多くの場合は無視されています。

高部 直線的なんですよね。「『夢=ゴール』を決めて、そこに行こう」というモデルになっている。行動しながら、働きながら徐々にやりたいことや意義を見つけていくという視点が抜けています。

点と線のたとえで思い出されるのは、スティーブ・ジョブズの話です。ジョブズはやりたいことが強烈にあって、Appleをつくって情熱を燃やして取り組んだ……と学校の先生方は引き合いに出すことが多いのですが、彼がスタンフォード大学での有名なスピーチで言っていたのは"Connecting the dots"。

つまり好奇心に従ってあっちこっちに点を打ちまくっているうちに星座が浮かび上がるように線が見えてきたという話で、直線的なキャリア観ではないんですよね。

宮崎 僕もConnecting the dotsの話を意識して『なぜ僕らは働くのか』を編集しました。最初からゴールが見えて仕事している人なんていないし、誰かに「やってみろ」と言われてやっているうちにつかめるものもある。

本の中ではクランボルツの計画的偶発性理論を取り上げ、「良い偶然をつかむための5つの方法」として紹介しました。社会人向けのビジネス書では見かけるものの、児童書ではなかなかないと思います。ここは大人の読者からも評判が良かったです。