〔PHOTO〕iStock

日本は自国ファーストでは生きていけない。だから内向き傾向が心配です

中川浩一×紺野美沙子(後編)

総理通訳の外国語勉強法』著者で元外交官(現・三菱総合研究所主席研究員)の中川浩一さんと、20年以上にわたりUNDP(国連開発計画)親善大使を務める女優の紺野美沙子さんの特別対談、後編! おふたりが見てきた途上国の問題、そして日本の若者たちに伝えたいこととは?

【前編はこちら:元総理通訳と国連機関の親善大使を務める女優が語る「外国語学習の真髄」】

日本人には難しいアラビア語の発音

紺野:総理通訳の外国語勉強法』を読んで、日本人には難しいアラビア語の発音があると書かれていたのが気になりました。具体的にはどんなのがあるんですか?

中川:たとえば日本語で「タ」ってありますよね。これがアラビア語だと、はっきり言う「タ」と、口をすぼめて言う「タ」の二通りがあるんです。ほかにも「カ」だって二通りありますし、「ア」についても、普通に「ア」というのと、喉の奥から「アー」というのがあります。

紺野:鳥の鳴き声みたいに?

中川:そうそう。カラスみたいに「アー」というのが、普通の「ア」とは別にあるんです。アラビア語のアルファベットは全部で28個あるんですけど、私はアラビア語学習を字の練習から始めました。日本人には同じ音に聞こえても、アラビア語だと別のスペルなので、それぞれ使い分けないとまったく意味が違う単語になってしまうんです。

中川浩一さん

紺野:でも、最初のうちは発音を気にしなくていいと書いてたでしょ?

中川:そうです。練習しても、最初は間違ったほうを言ってしまうんです。そうすると、先生は「ノーノー」「違うよ」って。アラビア語で「ラーラー」って言うんですけど。

でも、まだ頭の中で整理がついてないから、また間違えるんです。そうやって何度も先生に「ラーラー」って言われたら、さすがにまずいなと思いますよね。そういう恥をかく経験をしながら何度も言ってると、だんだん自然にできるようになるんです。

はじめは正しい音を出せなくても仕方ない。私が言いたかったのは、先に「発音」なんです。音を発するって書くわけですね、「発音」って。

紺野:はい。

 

中川:でも日本人はなかなか発音記号とか文法を気にして言えないことが多いんです。でも私は、研修でとりあえず何か言わなきゃいけなかったので、発音を気にする前に話した。それが良かったんです。

ひたすら音を出していけばだんだんと良い発音になっていくし、逆に他の人の言葉を聞いても、言えば言うほど「これ自分も言ったな」という単語が出てくるんです。そうしたら、自分の喉から出た音とネイティブの人の発音が比較できるようになって、徐々にネイティブの発音に近づいていく。

これは私の実体験です。でもその代わりに、間違えなきゃいけない。音を出さなきゃいけない。口を動かさずにいると、残念ながらいつまでたっても脳が覚えてくれないんです。

紺野:そうですよね。昔から日本人はきちんと喋ろうとしすぎるって言いますよね。その反対に外国の人たちは、文法はいい加減でもちゃんと言いたいことを主張するって。やっぱりそうなんですか?