自粛警察はなぜ生まれた?コロナ禍が浮き彫りにした「世間」の正体

日本人を苦しめる「同調圧力」とは
鴻上 尚史, 佐藤 直樹 プロフィール

際立つ日本の匿名率の高さ

鴻上 ちなみにネットの匿名に関しては、やはり総務省が面白い調査結果を発表しているんです。

日本の場合、ツイッターの匿名率は75.1パーセントにものぼります。ところがアメリカは35.7パーセント、イギリスは31パーセント、フランスは45パーセント、韓国が31.5パーセント、シンガポールが39.5パーセント。日本以外の国は匿名率がおおむね三~四割です。日本だけが突出して高いんですね。

匿名だから、ネットでようやく一息つくことができる。僕はその気持ちはよく分かります、「世間」の生き苦しさから生き延びる方法だと思います。実名だとどんなリアクションがあるのか分かりませんからね。そうした、ある種のしんどさを回避した結果ですね。

 

自粛警察≒自警団

佐藤 旅の恥はかき捨て。日本人は「世間の目」のないところでは、傍若無人になります。それと同じことですね。要するに〝書き捨て〟であるからこそ保たれる自由な空間。しかし匿名で名前が知られることなく〝書き捨て〟が可能ということは、それだけ他者への攻撃、誹謗中傷もひどくなる。

鴻上 それで承認欲求を満たす、といったこともできるのでしょう。さらにもっと根深い問題もあるかもしれません。たとえば、単なる承認欲求ではなく、本当に心底、正義だと思い込んでやっている可能性です。

佐藤 結果として不正義なわけですけどね。ただ、自粛警察という呼称が何か非常に目新しい感じがするわけですが、似たような言葉でいえば自警団というものがある。それこそ1923年の関東大震災のころから、日本では常に何か非常時に自警団が生まれ、そして人と社会に被害を与えていくわけです。

鴻上 そうですね。実際、いまでも地震、台風といった自然災害が起きると、わけの分からないデマが流布されますよね。外国人窃盗団が出没しているから気をつけろ、みたいな。いまだに関東大震災のときにもあった「井戸に毒を入れてるやつがいる」なんてことをネットに書き込む者も少なくない。パトロールしようと呼びかける者もいる。まさに自警団ですね

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