新自由主義による悲惨な現実を解決できるのは、左派ポピュリズムです

反緊縮左派が試されるとき(2)
松尾 匡 プロフィール

そして同様に、分別ぶったエリート側の仕切りの押し付けで犠牲になってきた地べたの生身の大衆が、もう我慢ならないと、自分たちの手で世の中をコントロールすることを求めている、

それが、カタロニアでも香港でもチリでも、2019年の世界を席巻した反乱をすべて貫く通奏低音になっていたと言えるでしょう。

右派ポピュリズムは反新自由主義

このような、知的エリートによる大枠の既定路線に対する大衆の叛逆は、よく「ポピュリズム」と呼ばれます。

現代の「ポピュリズム」と言えば、当初は右派側からのものが目立っていましたので、そのイメージを持つ人もまだ多いようです。さきほどのドナルド・トランプさんとか、フランスのマリーヌ・ルペンさんとか、イギリスのボリス・ジョンソンさんとかが有名ですね。

右派ポピュリズムの台頭が目立つ(photo by iStock)

新自由主義に痛めつけられて「テイク・バック・コントロール」を願う大衆は、財政危機論に惑わされ、経済停滞で雇用が限られる中では、自分たちのパイを守るために、さしあたり民族排外主義に陥る人がでるのも自然ななりゆきです。

でもそういう大衆は、グローバルに活躍する大企業や官庁のエリートを、土着の民族固有性を背負った自分たちに対する敵とみなします。そして、グローバル市場の暴虐から、国家権力によって自分たちの生活を守ることを求めるのです。

だから、今の右派ポピュリストは、たいていどこでも、反新自由主義になっています。特に「極右」と呼ばれる勢力はそうです。「大きな政府」の積極財政派だし、自由貿易には反対だし、EUからは脱退しろと言っています。このような主張がウケて、今右派ポピュリズム勢力が世界を席巻しているのです。

トランプさんもジョンソンさんも政権についていますし、ルペンさんは大統領選挙で決選に残りました。旧ソ連圏や中欧では極右政党が世論の支持で政権をとったり入閣したりしていますし、ドイツでも北欧でも極右政党の伸長は著しいです。

 

左派ポピュリズムの敵は?

しかし欧米において、新自由主義の犠牲になった大衆が、みんながみんな右派ポピュリズムに流れてしまうのを防いでくれているのは、左派側のポピュリズム勢力の存在です。

このところ頭打ち気味ですが、この5年ぐらい、アメリカのバーニー・サンダースさんやイギリスのジェレミー・コービンさん、フランスのジャンリュック・メランションさんなどの躍進を報道するニュースがあったことはご記憶と思います。

スペインのポデモスとか、ギリシャの急進左翼連合といった新興左翼政党も、今ではだいぶ変質したとも言われますが、ゼロから短期間で勢力を伸ばして注目されました。

ポピュリズムって言うからには、腹減ったとか筋肉痛だとかいう、生身の個々人からなる「われら」大衆の実感に立って、そこから離れたところから「われら」を食い物にしてくる「やつら」との間に線を引き、「やつら」を指差して敵認定する図式は共通するわけです。

でも右派ポビュリズムの場合は、その「やつら」が移民や少数民族や外国人だったりします。

それに対して左派ポピュリズムの場合は、「やつら」は、ごく一部のエリート富裕層ということになります。移民や少数民族や外国人の一般大衆は敵ではなく、同じ利害に結ばれて同じ敵と闘う「われら」の仲間と位置付けられます。

この両派のポピュリズムが、新自由主義に痛めつけられて生きづらい大衆の支持を奪い合うことになるわけです。