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不登校、挫折、恋…「父親の圧」から逃れ、男らしさを捨てた女装家の半生

短期連載「娘と私の成長記録」(2)

父親の人間性がわからない

いい大学に入って一流企業に就職し、結婚して立派なマイホームを建てる。それが「幸せ」だ――。

子どもの頃に、私は父親からそういう価値観を植えつけられて育った。1945年生まれの父親は、高度経済成長期に国際線の航空会社で働きはじめ、バブル経済の恩恵を享受した世代だ。

お金をたくさん稼いで家族に何不自由ない暮らしをさせて、年に何度も旅行に行き、週末にはベランダでバーベキューをする……子どもの頃に私が享受していたそんな生活は、父親にとっては絵に描いたような「幸せ」だっただろう。

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だが、私にとって、父親はひたすら怖い存在だった。その怖さとは、スパルタ的に鍛えられるとか、悪さがばれるとビンタされるとか、そういう類のものではない。

たとえばボールペンやハサミを使った後に、出しっぱなしにしていたり、トイレに行った後に、ドアを開けっぱなしにしていたりすると、顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。こちらとしては、いきなり感情を爆発させてくるので、すごくびっくりする。

一方で、友達との関りや生きていくうえで何が大切か、というような、倫理や道徳に関わることについては、怒られたことも褒められたこともない。

つまり、父親は何が好きで誰を尊敬していて、生きていくうえで何を一番大切にしているのか、というような人間性が見えなかった。だから一緒にいると人間ではない、何かロボットじみたものを前にしているかのようなわけのわからなさを感じ、私は怯えた。