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「アパレル業界を去る人」急増のワケ…もはや“夢を描けない業界”に

本当の原因はコロナ禍以外にも

先般、セシルマクビー(CECIL McBEE)が撤退すると云うショッキングなニュースが報道された。6期連続赤字で売上高もピークの半分ほどの121億円にまで落ち、全国43店舗ある直営店とECを順次閉鎖、正社員570人のうち販売職を中心に500人を解雇するようだ。

先んじて経営破綻に陥ったレナウンを筆頭に、今、アパレル業界では不採算ビジネスの整理統合が進んでいる。当然、それによって人材の流出も起きている。

この厳しい経済環境の中でやむなく職を失ってしまった人がいる一方で、自らの意思でアパレル業界に別れを告げて、まったく異なる業界に飛び込んでいく人も少なくない。それは何故か、現在のアパレルが抱える問題について少し考えをめぐらしてみたい。

しぼんでいくファッションの「役割」

アパレル業界を取り巻く環境は決してやさしいものではない。少子高齢化や、ファッション以外の分野への支出の増加もあって、2018年の市場規模は9兆7900億円(繊研新聞社調べ)と横ばいに近い状態がここ何年も続いている。

アパレル業界が成長産業だった時代は遠い過去のもので、安定産業から衰退産業への入口に立っているといってよい。それはファッションの役割が変わったことに関係しているのではないかと思う。

 

その昔、アパレル業界が隆盛だった時代は、「どこかに着飾ってお出掛けする」ということ自体を楽しむ文化が広く根付いていた。ファッション情報を発信する雑誌が読まれ、テレビのポップスターのファッションや髪型などが話題にあがっていた頃の話だ。

そんな、お洒落な人に憧れ、羨望の眼差しが注がれていた時代に陰りが見え始めたのは、2008年頃だろうか。今まで人との接触によって得られていた関心ごとが、手軽にスマホを使って自分で調べられるようになった。

すると、ファッションという装うこと以外に、健康や食生活、睡眠や運動、政治的な支持までと、個人の生活感までアピールできる時代へと変わった。そしてその結果、独創、個性、自分らしさの表現ツールとしてのファッションの役割は、その昔に比べるとさほど大きくなくなってしまったのである。