父の急逝後に突然認知症を発症した母の登志子、そしてしっかり者と思っていたのに、実は認知症になりつつあり、母の実家をゴミ屋敷にしていた伯母の恵子。伯母は独身で、編集者の上松容子さんは従妹と協力して2人のケアをすることになった。

当初同居を反対していた義母も最後とは折れて母とも同居になり、上松さん、義母と母、そして夫と娘との生活が始まる。転んだ後に入院していた伯母の退院後の居場所も探しながら、仕事と育児に加え、自宅での母の「見守り的介護」が続いた。使用済みトイレットペーパーを流さずにトイレの床に積み上げてしまったり、他人の歯ブラシを使ってしまったり、同居して見守る介護の大変さを思い知ることとなった。それでも頑張っている中、母が娘である自分を忘れてしまったことを知って衝撃を受ける。

今回は、もはや自宅介護が難しいと施設を探す決意をしたときのエピソードをお伝えする。名前だけ変えたドキュメント連載。

上松容子さん連載「介護とゴミ屋敷」今までの連載はこちら

今なら笑える、日常トラブルたち

母と暮らした日々の、小さなトラブルは、数え上げたらきりがない。認知症の老人がいる家庭では、当たり前の光景だろう。トラブルといっても、実は傍から見るとたいしたことではないのだ。だが、その小さな問題や不快感が積もり積もって、私たちの気を滅入らせるのだった。この先いつまで「がまん」を続けねばならないのか、それが見えないから息が詰まるような気分になる。

不思議なことに、渦中から抜け出した今なら、どれも笑い話にできるような出来事のオンパレードなのだ。

その1)マカロン事件

夫が仕事の得意先の集まりで、有名ブランドのマカロンをおみやげに貰ってきた。目のさめるような色の、おしゃれな菓子だ。冷蔵庫にしまっておいて、みんなで楽しもう。が、帰宅した私の目に入ったのは、すっからかんになった菓子の箱だった。ひとり2つか3つは食べられたはずだ。それを、冷蔵庫を漁った母が発見し、全部食べてしまっていたのだ。「みんなで分け合おうと思わなかったの?」と呆れて尋ねたら、母は心底申し訳ないという顔をして、「おいしい、っていうことしか覚えてないの」と下を向いた。

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その2)パンツ盗難事件

我が家では一日おきに洗濯をすることにしている。しかし、私と娘の下着がどんどんなくなる。おかしい! と母の持ち物をひっくり返してみると、私たちの下着類がぼろぼろ出てきた。洗濯物をたたんであげるというので任せておいたら、抜き取っていたのだ。しかも、そのとき母は私のパンツをはいていた。見るとへその位置まで上げようとしたらしく「ハイレグ」「半ケツ」になっている。もう伸び切って使い物にならなかった。