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治療薬がない…コロナ禍のウラで「悪夢の細菌」が増殖していた!

世界を襲う「スーパー薬剤耐性菌」
井高 恭彦 プロフィール

80年代以降、製薬企業は抗菌薬から徐々に手を引いていった。生活習慣病、がんなど、より長期安定的に高収益を得られる分野に研究開発の軸足を移したのだ。

それを幸いと薬剤耐性菌は種類、強度を増すばかり。そして、いまどんな抗菌薬も効かないスーパー耐性菌が登場した。スーパーというよりむしろ現代のモンスターと言った方がいいかもしれない。米疾病対策センター(CDC)はこれを「悪夢の細菌(Nightmare bacteria)」と称し、警告を発している。

2015年5月、世界保健機構(WHO)は薬剤耐性菌を抑制するための行動計画を採択した。日本の厚労省も取り組みを強化している。現存する抗菌薬ごとに投与する患者を厳選し、適正な時に適正量使うことで、耐性菌の発生を防ぎ、薬の効果を温存するのが基本だ。

 

ついに世界の製薬企業も動いた

新しい抗菌薬が出ればいいのだが、最近はほとんど出てない。この分野に力を注ぐ製薬企業が少ないからだ。

開発に膨大な費用がかかる一方で、成功するとは限らない。かりに新薬開発に成功しても、いざという時に効力を失わないよう投与機会が厳しく絞り込まれるので使用量は大きく増えない。また、ある程度普及すると間違いなく耐性菌が出てくる。そのため、研究開発投資の回収が困難で、次のチャレンジにつながらない。

最近、米国のバイオベンチャー2社が数100億円を投じて新しい抗菌薬の開発にみごと成功、承認を得た。しかし、19年、いよいよ収益を得る段階で、相次いで倒産した。開発時の借金を返せなかったのだ。

いまや抗菌薬の開発は「持続的な成長」を基盤とする製薬企業の収益事業には向かない分野となっている。