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東大教授に聞いた、量子コンピュータの「よくある間違い」

これからの量子力学の教え方・学び方
近年、量子を使った新しい技術の開発競争が、アメリカ、ヨーロッパ、中国などで激しさを増しています。そこでは、量子コンピューターだけでなく、量子通信や量子デバイスといった技術が注目されています。しかし、そもそも量子コンピューターとはなんなのかもサッパリ、という方も多いのではないのでしょうか?

そこで今回は東京大学の村尾美緒先生に、量子コンピューターが動くための「量子ソフトウエア」という概念から、量子コンピュータでよくある間違い、量子技術の将来性まで、とことん語っていただきました!

「量子ソフトウエア」とは何か

量子ソフトウエアには、大きく分けて実際に量子コンピュータを走らせるためのソフトウエアと、量子コンピュータで何らかのタスクを行うためのソフトウエアの2つがあります。

量子コンピュータを走らせるためのソフトウエアは、量子コンピュータを意図通りに動かすのが仕事です。ハードウエアと直接関係を持つのでかなり物理に近いところにあります。

しかも、現在の量子コンピュータはまだまだエラーが多く、フルパワーを発揮することができません。そのような状況でも量子コンピュータのパワーを引き出そうと考えると、直に物理系をいじるといった発想が向いています。

つまり、概念上で回路を最適化しても実験するとうまくいかないのなら、最初から直接物理的発想でやったほうが速いだろうというわけです。

村尾先生(写真:ERIC)

次に、量子コンピュータ上で走らせるためのソフトウエア、つまりタスクを実行するためのソフトウエアですが、量子コンピュータにどんなタスクをさせるといいかとか、こんなタスクならできるとか、また、こうやったらできるのだということは、まだきちんとわかっていません。

もしかすると、やりたいタスクに応じて量子コンピュータの動かし方を変えるほうがいいのかもしれません。量子コンピュータの中で実際に動作に関係する物理系をコントロールするやり方を、そのままプログラムとして書く手法もあります。

とはいえ、量子という新しいパワーを、人類がコントロールし、使える時代に入ってきたと言えます。これを使ってどんな新しい問題を解くべきなのか、そのソフトウエアをどうするかを考えることは、科学の進歩にとって大事だと思いますね。

 

この他「量子ソフトウエア」と聞いて、eコマースなどで目にする機会の多い「推薦システム」の量子版や、「Variational Quantum Eigensolver, VQE(変分量子固有値ソルバー)」と呼ばれるものを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

これらもソフトウエア研究のひとつではありますが、どちらかというと、すでにやり方がある程度わかっており、機械学習等を駆使して、さらに効率化するためにどうするか、という挑戦だと言えるでしょう。