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リベラルは自己評価が高すぎる…これでは選挙も勝てず何も変えられない

では、一体どうすればいいのか?

今、私たちはどのような社会に生きているのか? 分断をつなぎとめる方法はあるのか? 戦後75年の節目に、現代ビジネス×小説現代で行う共同企画。その第一弾として、『ルポ 百田尚樹現象』著者でノンフィクションライターの石戸諭氏と、『教養としての歴史問題』(共著)が発売されたばかりの近現代史研究者の辻田真佐憲氏による特別対談を掲載!(写真:村田克己)

百田尚樹とTwitter

辻田:石戸さんは『ルポ 百田尚樹現象』の中で、百田さんと新しい歴史教科書をつくる会(以下、つくる会)を比較しています。つくる会のパートでは、小林よしのりさん、西尾幹二さん、藤岡信勝さんに取材していますが、なぜこの人選だったのでしょうか。

石戸:僕としては、右派を駆り立てている反権威主義に強い関心がありました。リベラルメディアを敵に見立てた反権威主義が、マーケット的に力を持ったのはいつからなのか。僕はつくる会の登場が契機だと考えました。その3名は大々的に書籍を売り、イデオロギーのみならず反権威というスタイルに共鳴する人たちも開拓していきました。そこを源流とするならば、正当な後継者が百田さんであるというのが僕の仮説です。

辻田:2016年に出版された菅野完さんの『日本会議の研究』では、つくる会の事務方にも注目していました。石戸さんの本ではそこは取り上げていませんが、あえて不要だと考えたのでしょうか?

辻田真佐憲氏
 

石戸:僕は裏方よりも、主役とプロモーターの存在と意識の変化に注目しています。実際に表舞台に立っていた本人たちの意識や人物像、著作物に迫るほうが日本の右派現象を描けると判断したからです。

僕の場合は、さらに取材に応じないと言われた――そして実際に大手メディアも含めて、どこも取材に失敗した――見城徹さんや、花田紀凱さんなど「大物」と呼ばれる出版界のプロモーター的存在に、直に取材をしています。そこでわかったことは本の中に詳細に記しています。

なぜ花田さんが百田さんを右派論壇に引き込んだのか。その契機はどこにあり、見城さんはなぜ最後まで百田さんを守ろうとするのか。結局、彼らの関心は「売れる」というところに向いており、百田さん自身もマーケットの申し子のような感性を持っています。

辻田:そうだったんですね。実は私はつくる会がきっかけで、論壇に興味を持ちはじめました。中高生時代は『正論』『諸君!』を毎月読んでいるような生徒でした。

石戸:僕は大学生の頃、『論座』などリベラル系の雑誌を読んでいましたね。だから、逆側から保守論壇を見ていたところがあります。今回の『ルポ 百田尚樹現象』では自分とは反対にいる、あるいは立場が異なる人たちと対話をしながら現象を分析しました。ただ、右派は昔から言っていることがまったくアップデートされていないですよね。