photo by gettyimages

アマゾン幹部が秘策を明かす「機械学習ビジネス」爆発的普及の条件

世界的覇権を目指す「必勝戦略」とは

“黄金時代”の到来

「私たちは、『機械学習の黄金時代』に生きている」

アマゾンのネットインフラ事業部門「アマゾン・ウェブサービス(AWS)」で機械学習部門のバイスプレジデントを務めるスワミ・シヴァスブラマニアン氏(以下スワミ氏)はそう語った。

我々が現在、俗に「AI」とよぶものの根幹には、「機械学習(マシーンラーニング)」というテクノロジーが存在する。すなわち、機械学習の進化と変化が、最近のコンピュータと生活の変化を促す根本にある、ということだ。

AWSのような企業は、それを支える存在でもある。

AWSで機械学習関連事業の開発を見続けてきたスワミ氏に、ネットインフラ事業者の目から見た「機械学習がもたらしたもの」について訊ねた。

アマゾン・ウェブサービスで機械学習部門のバイスプレジデントを務めるスワミ・シヴァスブラマニアン氏

現代を代表する「インフラ」

機械学習の話に入る前に、まずは、AWSのような「ネットインフラ事業者」がどんな存在なのか、おさらいしておこう。

企業は過去、大規模なシステムを運用するために、自前でサーバーを所有していた。もちろん、今も必要に応じて「自前で持っている」企業は存在するが、その数は劇的に減っている。個々の企業がサーバーを持つことに投資するよりも、サーバーを大量に運用し、その処理能力を「インフラ」として提供する事業者に頼ったほうが、投資効率がいいからだ。

この話は、サーバーの処理能力を「電力」に置き換えるとわかりやすい。

自前の発電所を細かくつくることもできるし、そこにも利点はあるが、多くの場合は大型の発電所に集約し、電力会社から供給を受けたほうが効率的だ。だから電力会社は「インフラ」事業とよばれるのであり、同様に、ネットワークサービスとして処理能力を提供する企業も「インフラ」事業なのである。

俗に「クラウド」とよばれる処理形態は、AWSに類する事業者がサーバーの処理能力をインフラとして提供するようになったから成立した概念であり、現在のスマホやPCでのサービスは、ほぼクラウドの所産である。

スマホやPCでのサービスは、ほぼクラウドの所産だ photo by gettyimages

機械学習とはなにか

そのクラウドの価値をさらに変えているのが「機械学習」の導入だ。スワミ氏は8年間、AWSにおける機械学習関連事業を手がけている。

判断を下すにはルールが必要だ。機械=ソフトでもそれは変わらない。

最も基本的な方法は、人間が細かくルールを定義してソフトに書き込むことだが、それには限界がある。複雑なルールをいちいちつくっていたのでは時間がかかるし、なにより世の中には「ルールづくりに携わる人間が気づいていないルール」や「明確に定義できない、あいまいな部分の残るルール」のほうが多いため、事前に正確に定義するのが難しい。

 

その最たるものが、「顔を認識して個人を見分ける」画像認識であり、「音声を聞き取ってテキストデータにする」音声認識だ。

大量のデータを活かして、少数の手がかりからソフトが自らルールを生み出し、人の判断を助けるサービスの開発を容易にする技術が「機械学習」だ。過去10年で、サーバーの性能が向上し、「深層学習」「強化学習」といった手法の研究が進んだことで、機械学習は急激に進化し、広く使われるようになってきた。

スワミ氏が「黄金時代」というのはこのためだ。詳しく聞いていこう。