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「老人受刑者」の悲惨な現状…刑務所にしか居場所がない高齢者たち

「わざと」万引して収監される高齢者も

刑務所で介護される「老人受刑者」

刑務所を取材する機会に恵まれた。その目的は65歳以上の「老人受刑者」の実情をつぶさに見聞し、インタビューすることにあった。いったい彼らはどんな日常を送り、どのような思いで日々を過ごしているのだろうか。そこから見えてきたのは、日本の高齢社会の実情だ。

栃木県大田原市の黒羽刑務所を取材したのは昨秋。同所には65歳以上の要介護受刑者11名が収容されていた。彼らは刑務所内の「第10工場」で、玩具の製作やハンガー組み立てなどの簡単な刑務作業に就いていた。

彼ら全員がPM級(軽度の精神障害者、身体に欠陥のある者、認知症を発症している者)に指定された受刑者たちだが、なかには歩行補助機を使う者や刑務官に車椅子を押されて工場に出入りする者もいた。紙おむつは必需品で倉庫に山積みになっていた。

第10工場の作業風景(筆者撮影)
倉庫に積まれた紙おむつ(筆者撮影)
 

要介護者で認知症を患っている受刑者にインタビューした。阪田茂樹(仮名)は79歳の初犯の受刑者であった。

警視庁管内で逮捕されたのは2015年6月24日の74歳のとき。容疑は業務上横領であった。被害にあった会社は下町のガラス製造販売会社。阪田は1998年から同社に勤め始め、経理を任されて小切手や預金の管理を1人で担当していた。横領は2010年4月~9月の間に行われて、半年の間に総額4700万円を着服した。

認知症を発症している79歳の受刑者(筆者撮影)

――本日はよろしくお願いします。

阪田:今日は何日ですか?

――9月〇日です。

阪田:あれ、〇日なら、もう、出所してもいいですよね。おかしいな、日にちを間違えているんですかね(筆者注:認知症が進んでいるようだった)。