「SNSの毒」から距離をとった結果…ある作家が陥った「矛盾と疑問」

一体、なんのためにあるんだろう?
高木 敦史 プロフィール

SNSは小さな街になり、その中に個人経営の趣味のバーのようなクラスタが増えています。全てを総合した包括的なSNSの役割はだんだん終了に向かっているのかな、と感じています。実際、自分も映画SNSを使うようになってから、ツイッターで映画の感想を呟こうという気持ちが失せていきました。

昔、個人ブログがSNSに取って代わられたのは、自分の内面を一つのプラットフォーム上で細かくカテゴリ分けするのが面倒になったからでしょう。あらかじめ制限があるからカテゴリを気にする必要がない——それが強みだったように思います。

しかし人は多面的な存在です。一人の人間の内面全てを一元的に表せるわけではない。結果として今度は逆に、カテゴリごとにプラットフォームを分けるという方向性に移り変わっています。

 

最近ではツイッターでリンクを踏んだら別のSNSのアプリが起動することも珍しくありませんし、ツイッターはSNSとSNSを繋ぐカタログのようなSNSになっていると感じます。そして「似た他人」はカタログを介することでより多くの人にとっての「似た他人」になります。

インスタとかTikTokはまさにカタログですね。現在のツイッターの姿と異なり、それ単体でカタログとして成立しています。人が集まるのも宜なる話です。

Image by iStock

SNSの良さは自分の指先で触れられる距離にあることだと思いますし、暇つぶしに何となく何か眺めたい」と思ったときに指先を動かして目の前のものを眺め続けるというのは、私が学生時代に何となくカタログや雑誌をめくって暇を潰していた行為と同じです。

なので、そういう空間で誰かに「似た他人」だと思われること——それが一作家としてのSNS上の宣伝の活路だと思っています。たとえばこの文章もそうですね。自分の小説とは無関係な場所で、もしかすると誰かに「この人は自分にとって似た他人だ」と思ってもらえて、そのうち書店で見かけたときに思い出してもらえたら嬉しい……と思って書いています。

という原稿を書いていたところ、ちょうどツイッターでとある若手ミステリ作家さんの著作が急に売れ出したという話を目にしました。追って行くと、TikTokで誰かに紹介されたのがきっかけだそうです。「まさにそれだよ……!」と横目に見ながら、明日も頑張って生きようと思います。

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