原発賠償金で9億円を騙し取った「わるいやつら」の正体

謎の女将が暗躍
週刊現代 プロフィール

不正分の返済地獄

元の雇用主だった東洋健康センター社長・金から賠償金の話を持ち掛けられたのは、そんなころだった。

「黒田さんは顔が広い。知り合いの社長で、いい人はいませんか?」

こんなに美味しい話はなかなかない。借金の負い目もあって、黒田はカネを貸してくれていた社長たちに声をかけていった。社長たちには、賠償金の手続きを行う代わりに、借金の返済を猶予してもらったり、利息をまけてもらう約束だった。

結局、黒田は5人の社長を金に紹介し、詐欺に巻き込んでいった。

「全然、詐欺をしているとは思っていない。あくまでも人助け。私は手数料ももらっていない」

逮捕される直前、取材に訪れた新聞記者に、黒田はこう語っている。

だが、詐欺だと知らなかったとしても、罪が消えるわけではない。今年1月、福島地裁が黒田に下したのは、懲役3年執行猶予4年の有罪判決だった。

判決の瞬間、黒田は手で顔を覆い、嗚咽を漏らした。地元経済界を渡り歩き、事業の成功を夢見た女将は、現在、田んぼに囲まれた自宅で、ひっそりと暮らしている。

 

それにしても、小さなお店や企業の経営者はなぜ、「多額の賠償金が簡単にもらえる」という甘い言葉に騙されたのか。それには、ある理由があったと、詐欺に加担したスナックの経営者が語る。

「詐欺師たちは、『東電に内通者がいる。彼から、必ず賠償金をもらえる方法を教えてもらった』というのです。それなら安心だと、コロッと騙されてしまいました」

東洋健康センターの金も公判のなかで、賠償金の申請を「東電にいる彼(村田)の友達に頼んだ」と証言している。ただし、東京電力側はその詳細について「公判中なのでコメントを差し控える」と口を閉ざす。