嘘をついた女

佑太郎とのデートは、案外楽しかった。というのも、彼は食事中もずっと留美を褒めちぎっていたからだ。

医者というのは、思ったより出会いのない職業らしい。

彼が言うには、ほとんどが女医や看護師と結婚し、他の業界の女とはあまり接点がないそうだ。

「留美さんのような美人で性格も優しい人が、どうして彼氏がいないんですか......?アプリでこんな人に出会えるなんて、まだ信じられません」

留美は少しばかり驚く。正直、「優しい人」なんて言われたことはあまりない。

「ちなみに、他にデートしてる男性はいますか......?」

ふと、直彦の顔が頭をよぎった。

彼からは何度かメッセージが来たが、返信はしていない。初対面で大人げなくキレてしまったにも関わらず、先方から謝罪されるとかえって気まずく、反応できずにいた。

「いいえ。いません。仕事も忙しいし、コロナもあったし......」

「きっとすごくモテるのに......。でも、誘いは沢山ありますよね?」

「まぁ......けど、よく知らない男性とすぐに会うのもちょっと......」

留美は微笑みながら嘘をつく。すべてを赤裸々に語る必要はないし、イメージ戦略は重要だろう。

-AD-

「今どき古風な考え方をお持ちなんですね。素敵です。実は僕、数年前に元カノに浮気された経験があって......。それ以来、恋人は作らずにいました」

「そんな......佑太郎さんみたいな方を裏切るなんて、酷い女性もいるんですね!」

彼に調子を合わせ、眉をひそめて怒ってみせる。

「あ......こんな話、すみません。留美さんは裏切り行為なんて無縁な女性なのに......」

「いえ、気にしないでください。佑太郎さんが真面目な方だってこと、よく分かりましたから」

「留美さん......」

すると佑太郎はしばし唇を噛み締めて俯いた後、驚くべきセリフを口にした。

「......初日に図々しいのは承知ですが、僕とお付き合いしてもらえませんか!?留美さんは本当に僕の理想です。本気です。できれば結婚を前提に......!」

彼の瞳は、切実だった。