ライバルが続々。アプリ婚活の弊害

「私は金融マンやお医者様とデートしてる。あのアプリ、ハイスペックな男性がたくさんいて楽しいわ」

留美のセリフを聞いて、胸の奥がチクリと痛んだ。

――このアプリ、年収5000万だの1億の奴がザラにいるからな。1000万レベルが適当なメッセージ送っても埋もれるだけだ――

マッチングに苦戦していた際、淳也に言われたダメ出しも思い出される。

こうして自分を呼び出したということは、彼女のほうも少なからず好意があるのではないか。そんな淡い期待を抱いていたが、完全に勘違いだったらしい。

固く結んだ口の中に、苦い味が広がった。

留美は複数のハイスペ男たちとマッチングしデートを重ねている。今夜はただ、直彦のしつこい謝罪に応じてくれただけなのだ。

「それで、若い商社マンのアプリ事情はどうなの?気にしないから教えてよ」

億男お坊ちゃん医者など、ハイスペ男たちとのマッチング自慢は無言でスルーした直彦だったが、その後に「若い商社マン」と言われたのには思わずムッとした。

被害妄想と言われればそれまでだが、見くびられているようで面白くない。

「えーっと、俺のほうは……」

さくらのことを話すつもりはなかった。余計なことを言ってまた怒らせたくもない。しかし最終的に対抗心が勝ち、直彦はつい口を滑らせた。

「実は……花束ランキング1位の女性とデートすることになりました」

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完全に予想外だったのだろう。留美は目を見開き、口もポカンと開けてこちらを見つめている。

その顔には思い切り「嘘でしょ」と書いてあり、してやったりという感情と言わなきゃよかった後悔が交互にやってきて直彦を混乱させた。

「へぇ……それはよかったわね。その彼女とどうなったか、今度ぜひ報告してよ」

数秒の沈黙ののち、とってつけたような笑顔を浮かべた留美がそんな提案をしてきた。

「報告……まぁ、別にいいですけど」

真意をつかめず、直彦は首を傾げながら頷く。

――どういうつもりだ? 今後は『友達枠』で会おうってことか…?

しかしそういうことであれば、さくらとのデートは失敗できないと思った。

留美に情けない報告をするわけにはいかないからだ。