元高校球児が見た「コロナ禍の甲子園」、大雨とも戦う「神整備の秘密」

雨ニモマケズ、コロナニモマケズ…
朝倉 宏景 プロフィール

今年、はじめて観客が入った公式戦。雨が降りしきる五回表、一点差に迫られた阪神タイガースの青柳投手は、投球の際に足が滑ることもあった。

中継では、手を組み合わせ、祈るような仕草で戦況を見つめるファンの姿も映った。また、鳴り物の応援が禁止されているということもあって、観客は手に持ったメガホンや拍手で、投手を応援した。例年では聞こえないような、選手を鼓舞する声も聞こえた。

降りしきる雨のなか、球場中が一体となっていく。結果的に、五回表をタイガースがしのぎきり、降雨コールドゲームで試合は無事に成立したのだ。

野球にかぎらず、スポーツは観客がいてこそ、白熱し、盛り上がるということをあらためて再認識させられた試合だった。そんな一体感と興奮も、試合が成立するかどうか、ぎりぎりのところで持ちこたえたグラウンドと、その戦いの場を悪天候でも最善の状態に整える裏方――阪神園芸の存在があったからこそ感じることができたのである。

 

拙著『あめつちのうた』では、「雨降って、地固まる」をテーマに、そんな阪神園芸の奮闘を、甲子園の一年間をとおして描いた。高校を卒業してすぐに、グラウンドキーパーの世界に飛びこんだ主人公・雨宮大地をはじめ、登場人物はそれぞれに生きづらさの「雨」に打たれる。グラウンドキーパーとして、空から降る雨と格闘しながら、人間としても困難を乗りこえ、成長していく。

今年は新型コロナウィルスに、豪雨災害と、日本はあまりに多くの「困難」に直面している。いつかこの災禍をのりこえ、超満員の甲子園球場で、プロ野球や、春、夏の高校野球が行える日が来ることを心の底から待ちわびている。

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