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元高校球児が見た「コロナ禍の甲子園」、大雨とも戦う「神整備の秘密」

雨ニモマケズ、コロナニモマケズ…

「鳥肌が立った」アイデア

今年、第102回を迎えるはずだった、夏の甲子園――全国高等学校野球選手権大会は、新型コロナウィルスの影響で戦後初の中止決定が下された。

各地方では、独自の代替試合が行われているが、全国の球児にとって「聖地」である阪神甲子園球場へとつながる道は、最初から閉ざされている。

球児たちに少しでも前を向いてもらえたら。そんな願いから企画されたのが、甲子園球場の土をキーホルダーに入れ、日本高等学校野球連盟に加盟する野球部の3年生全部員を対象に贈呈するというアイデアである。

阪神タイガースの練習中、矢野燿大監督からこのアイデアを相談され、「鳥肌が立った」と語ったのは、甲子園球場のグラウンド整備業務を請け負う阪神園芸株式会社の甲子園施設部長・金沢健児さんだ。

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ただの土ではない。選手やコーチ、球団スタッフ、職員たちが直接グラウンドから集めた土が送られる。一つのキーホルダーに、3~5グラムの土が封入され、全体では約250キロ分になったという。

「どうせパフォーマンスだけで、大部分は倉庫の土を入れるのだろう」と、揶揄する声もあったそうだが、もちろんすべてグラウンドからとった。

実はセンバツや夏の甲子園の大会期間中で、敗戦した球児たちが拾い集め、持ち帰る土の量よりも圧倒的に少なかった。選手をふくめた約150人で、じゅうぶん集めきれる量だったという。ちなみに、通常の春と夏の大会が開催された場合、年間で約2トンもの土がなくなる。

「選手たちは楽しそうに土を集めていた。プロの選手でも、案外、甲子園の土を集め、持ち帰った選手は少ない。甲子園に出場しても、学校やチームの方針で土の持ち出しが禁止されていた選手もいる。そんなことを話しながら集めていたら、あっという間だった」という。