赤いエリアに住む黒人やマイノリティは融資から排除された

黒人はこうして排除されてきた…日本人が知らない「住宅差別」という問題

ゾーニングとレッドライニングとは何か

「制度的人種主義」に対する関心の高まり

2020年5月25日、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に殺害されたことをうけて、ブラック・ライヴズ・マター(以下BLM)運動はアメリカ各地で展開され、その動きは世界各地に広まっている。

このBLM運動を受けて、現在アメリカにおける制度的人種主義(institutional racism)、あるいは構造的人種主義(structural racism)という問題に注目が集まっている。

制度的人種主義という言葉は、1960年代中頃の公民権運動の中でブラック・パワーを唱えるストークリー・カーマイケルが用いた概念である。カーマイケルは人種差別主義者などによる個人の人種差別と区別して、教育機会の欠如や劣悪な住宅環境など、主に黒人コミュニティや人種的マイノリティの間で横行する人種差別を制度的人種主義と呼んだ。

これまでもBLM運動は黒人やヒスパニック系などを意図的に調査対象とする警察のレイシャル・プロファイリングの問題や、警察の過剰で暴力的な取締りに対して継続的に抗議してきたが、今回のミネソタの事件を受けて再び大規模な抗議運動へと発展した。まさにBLM運動は、警察の過剰な取締りというアメリカ社会の中で制度化された人種主義への異議申し立てなのである。

ではアメリカにおいて、この制度的人種主義とは歴史的にどのように展開してきたのであろうか。本記事では制度的人種主義としての住宅問題について考えみたい。

 

黒人の大移動と「ゾーニング」の歴史

アメリカでは19世紀末から20世紀初頭にかけて工業化が進み、都市部への人の移動が活発に起こっていた。この工業化により期待された労働力が、ヨーロッパからの移民や南部からの黒人であった。特に南部から北部や西部への黒人の移動は「大移動(Great Migration)」と呼ばれるほど大規模なものであった。黒人は南部の人種差別的な社会からより良い仕事や生活環境の向上を求めて移動したのである。

ところがこうした黒人人口の急増に伴って、北部や西部では黒人が日常生活の中で以前よりも存在感を増し、白人との間で摩擦が生じるようになった。その中でももっとも対立的な問題の一つが、住宅をめぐる問題であった。黒人の「大移動」によって黒人人口が急増したことで、北部や西部の都市では20世紀初頭から白人居住区への黒人の流入を防ぐために、黒人の居住区を制限する動きが活発になっていったのである。

(出典:「第一期(1910-1940)と第二期(1940-1970)の黒人の移動先と黒人人口の増減の割合を表した図」“GreatMigration1910to1970-UrbanPopulation,”)