雑誌「Kiss」にて連載されていた板垣巴留さんのエッセイマンガ『パルノグラフィティ』が、8月6日に単行本として発売された。同日に最新刊の20巻が発売となった『BEASTARS』で多くの漫画賞も受賞している板垣さんの生まれ育った環境が垣間見え、クスッとしながらほろりとしつつ、子育てや他人との暮らしのヒントも満載の一冊だ。

発売を記念して無料試し読みを連続でお届けする。第1回は板垣さんが育った「家」について。

マンガ/板垣巴留 文/FRaU編集部

『BEASTARS』の漫画家はどんな家で育ったのか

素晴らしい作品に出会うと、「一体これを生み出した人はどんなふうに育ったんだろう」と思う。それは自然なことだ。
米津玄師やあいみょんはどうやって育ったらあんな素晴らしい歌を作れて歌えるんだろう? とか、羽生結弦選手のあのメンタルと身体能力はどうやって培われたんだろう? とか、藤井聡太棋聖が将棋の世界ですごすぎる理由を少しでも知りたい、とか……。

そんな疑問を明らかにしてくれるのが、板垣巴留さんのエッセイマンガ『パルノグラフィティ』(Kiss)だ。

板垣さんは2016年から週刊少年チャンピオンで『BEASTARS』を連載している。これはハイイロオオカミ・レゴシを主人公とした動物版青春ヒューマンドラマ。肉食動物と草食動物とがともに暮らす社会で、レゴシが通う学校を舞台に物語が広がっていく。現実にはない世界のはずなのに、私たちのリアルな悩みや問題点がはっきりと描かれていて、とにかく夢中になれる作品だ。なんとこれが連載デビュー作なのだが、「このマンガがすごい2018オトコ編」の2位を皮切りに、「マンガ大賞2018」「第21回文化メディア芸術祭賞新人賞」「手塚治虫文化賞 新生賞」「講談社漫画賞 少年部門」と様々な賞を受賞しまくった。

9歳上と6歳上の姉のいる「家族」

いったい、こんな繊細でハラハラしてカッコいいけど切ない物語を生み出す人はどうやって育ったのか。レゴシの祖父・ゴーシャのモデルは、『パルノグラフィティ』に描かれている祖父とも板垣さん自身が公言しているが、『パルノグラフィティ』には巴留さんからみた「家族の姿」が率直に描かれている。

担当編集者はこう語る。

「板垣巴留さんのSNSや『BEASTARS』のあとがき漫画で垣間見える、何気ない日常に対する目の付け所がかねてから好きで、お会いした際にエッセイ漫画を描きませんか?とご提案しました。

作中で描かれているとおり巴留さんは9つ上のお姉さんと6つ上のお姉さんのいらっしゃる3姉妹の末っ子なのですが、僕も上の二人とは9つ差と6つ差の3人きょうだいの末っ子なので、末っ子あるあるを語り合いまして。そんな話をしているうちに、自ずと家庭環境について描いてみましょうかという話になったように覚えています。

経緯が経緯なので、描かれているのは家庭環境の他にも、学生時代の思い出、たとえば高校生の時に一日だけ学校をサボったこととか、誰でも経験するような至って普通のことばかりです。でもだからこそ、巴留さんが描く “何気ない日常で抱いた、かけがえのない感情”が読んでいて自分にもどこか分かることとして、伝わってくるんですよね」