Dos Monos(左からTaiTan、荘子it、没)

今の日本に何が足りない? 台湾天才大臣とヒップホップユニット「異色のコラボ」が問うこと

新型コロナウイルスへの先進的な対策によって世界的な評価を集める台湾のIT担当大臣、オードリー・タン(唐鳳)。そして、独自のスタンスの活動が国境を超えて評価を集めている東京発の3人組ヒップホップユニットDos Monos(ドスモノス)。「Civil Rap Song ft. Audrey Tang」は、両者による“異色のコラボ”が実現した一曲だ。

発案は、コンテンツレーベル黒鳥社の若林恵。3月に行われたオードリー・タンのインタビューをもとにDos Monos側に企画を打診。わずか一週間で制作されたトラックに3人がラップを乗せ、オードリー・タン本人による許諾を得て、5月26日には楽曲が公開された。

オードリー・タンの言葉は、パブリックセクター(=行政)でもプライベートセクター(=民間)でもなく、その中間にある「ソーシャルセクター/シビックセクター」の重要性を語るもの。現職のIT担当大臣とヒップホップクルーが公認のコラボレーションをするという意味でも、日本社会に明らかに欠ける視点を告げるメッセージ性についても、とても画期的なものになっている。

この曲について、そして政治と音楽の関係について語り合う前後編の対話。前編では楽曲制作の背景について、Dos Monosの荘子it・TaiTan・没、そして若林恵に話を聞いた。

 

天才大臣の言葉に批評的な角度から切り込む

――まずは“Civil Rap Song ft. Audrey Tang”を制作した経緯から聞かせてください。若林さんはなぜDos Monosとオードリー・タンのコラボを発案したんでしょうか。

若林 オードリー・タンの声をトラックに乗せたら面白いんじゃないかと思って、まずはTaiTanに連絡したんです。前に自分たちのイベントに出てもらったのが出会ったきっかけだったんだけれど、僕はDos Monosの音楽は好きだし、僕なりにオードリー・タンのインタビューの中で重要だと思ったところを切り出したので、それを読み解ける人じゃないと辛い。Dos Monosならできるんじゃないかと思って話をしました。

若林恵

――TaiTanさんは話を聞いてどんな印象でした?

TaiTan まず自分のところに突然電話がかかってきて。単純に現役の大臣とラッパーが公式にコラボするというのが面白いと思ったんで、「もちろんやります」って返事をして、その後に3人でいろいろ意義について考えました。星野源さんの「うちで踊ろう」の動画に安倍首相が乗っかったことへのアイロニーとして機能するとも思ったし。

没 たしか、最初はラップを乗せない予定だったんですよ。そうしたら荘子itくんが早い段階でビートにしてきて、それを聴いたらめっちゃヤバかったので。これは俺らの言葉を乗っけないともったいないということになった。

――荘子itさんはどんなところにモチベーションを感じましたか?

荘子it 最初に思ったのは、COVID-19の対策でものすごく活躍している台湾の若き天才大臣の言葉を音楽に乗せて拡散する、つまり愚直にアンプリファイするということは、少なくとも自分たちがやるべきことじゃないだろう、ということですね。それだったら別の人がやればいい。僕らの表現がオードリー・タンとコラボした時に最大の効果を生むのはそのやり方じゃない。というのも、僕らは今までずっと「この国で異物感やバグみたいなことを起こしていきたい」と言い続けてきたんです。つまり、何かしらの批評的な角度から切り込むことがDos Monosの本懐である。オードリー・タンのことは100%リスペクトしつつ、だからこそ、その言葉を別の角度から切り取って、本人が意図しない価値を見出していく。そういうことができれば最適解だろうと思いました。