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プロ野球開幕…!始球式のお約束「空振り」がはじまった意外すぎる理由

時は明治時代に遡る

恥をかかせるわけには…!

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3ヵ月遅れで開幕したプロ野球。7月10日からは観客を入れた試合が再開されている。

球場の盛り上がりも徐々に戻ってきており、日本のプロ野球ならではの行事である始球式も再開された。著名人が登場し、マウンドからの投球を披露する始球式は、開幕に華を添える重要なセレモニーだ。先攻チームの一番打者が空振りをするのもお約束となっている。

実は、この始球式の一連の流れは日本発祥の文化である。その歴史は110年以上前、明治の時代にまでさかのぼる。

当時はまだ日本にはプロの野球チームが存在しておらず、大学の野球部こそが球界であった。その中でも、海外遠征を組むなど特に力を入れていたのが早稲田大学だ。国内随一の強豪チームとなった早稲田大学は、1908年にアメリカの大リーグ選抜「リーチ・オール・アメリカン」を日本に迎え、対戦することとなった。

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この試合はアメリカのプロ選手が初めて日本でプレーする試合だった。そのため、早稲田大学は記念になる行事を行いたいと考え、総長・大隈重信による始球式を考案したのだ。

迎えた試合当日、史上初の始球式のマウンドに立った大隈が投げた球は、勢いが足りずキャッチャーに届く前に落下、止まってしまうという予想できない展開に。

大隈は総理大臣まで経験していた超大物。そんな大隈に恥をかかせるわけにはいかない。そう考えた早稲田のバッター・山脇正治はとっさの判断で、思い切りバットをスイングした。

それを見た球審も山脇の考えを理解し、「ストライク」とコール。よって、大隈の名誉に傷がつくことは避けられた。それ以降、始球式では投手に敬意を示すという意味を込めて、バッターは空振りをすることが慣例となっていった。

私たちが見慣れた光景は、権力者に恥をかかせてはいけないという一人の若者の忖度から始まったのである。(富)

『週刊現代』2020年8月1日号より