大人になっても、夕食の誘いを断って好きな本を読みたいと思うときに、あなたはかすかな罪の意識を感じるかもしれない。あるいは、レストランでひとりで食事するのを好み、周囲の人々からかわいそうにという目つきで見られても意に介さないかもしれない。あるいはまた、物静かで知的な人に対してよく使われる、「あれこれ考えすぎる」という言葉を浴びせられることがあるかもしれない。言うまでもなく、そういうタイプの人間を表現するには、「思索家」という言葉がふさわしい。
内向型が自分の能力を正当に評価するのがどれほど難しく、それをなし遂げたときにどれほどすばらしい力を発揮するか、私はこの目で見てきた。一〇年以上にわたって、法人顧問弁護士から大学生、ヘッジファンド・マネジャー、夫婦など、さまざまなタイプの人に交渉スキルを教えてきた。同時に私は、顧客が自分の生まれ持った性格を知り、それを最大限に活用する方法を身につけるのを手助けしてきた。
私の最初の頃の顧客に、ローラという弁護士がいた。ハーバード・ロースクール(法科大学院)を経てウォール街の企業の顧問弁護士になった彼女は、「私はこの仕事をするには静かすぎるし、消極的すぎるし、思索的すぎる」と悩んでいた。大胆で口達者なふりをしようとすら考えた。だが、ある重要な交渉の場で、私のこんな言葉を思い出したのだという。
――あなたは内向型なりの独自の交渉力を備えている。それはあまり目立たないかもしれないが、力強さの点で他人にひけをとらない。おそらく、あなたは誰よりも準備を重ねているはず。語り口は静かだが、しっかりしている。考えなしにしゃべることはまずない。柔らかい物腰を保ちながらも力強く、時には攻撃的とさえ思える立場に立って、理路整然と話す。そして、たくさん質問をし、答えに熱心に耳を傾ける。これはどんな性格かにかかわらず、交渉に強くなる秘訣なのだ。
結果として彼女は、自分らしいやり方で難しい交渉を見事にやってのけた。現在では内向型という自分の性質を喜んで受け入れている。