中国漁船「インドネシア人船員遺体海中投棄」にブチ切れた政府の矛盾

ワクチン開発は中国頼みの風見鶏外交
大塚 智彦 プロフィール

海上では断固もワクチンでは協力

こうしたインドネシア人船員への非人道的対応を含めた海上で発生する様々な事案への対処を目的としたIMICの設置、さらに南シナ海で中国が一方的に主張する「九段線」の一部がインドネシア領ナツナ諸島北海域でインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と重複するという中国側に対しても「重複などしていない。そもそも九段線は国際的に認められない」と一蹴するなど、対中国外交においてジョコ・ウィドド政権はかつての親中外交から「中立等距離外交」に舵を切ろうとしていた。

ところが最近、コロナウイルス対策では再び中国頼みの姿勢があからさまになりつつあり、ジョコ・ウィドド大統領の方針転換の動きに「一貫性に欠ける」「風見鶏外交ではないか」との批判も出始める事態となっている。

gettyimages

新華社やインドネシアのメディアによると、ジョコ・ウィドド大統領は7月13日、コロナウイルスのワクチン開発をインドネシアの国営製薬会社と中国のシノパック・バイオテック社が共同で進めることとし、すでに共同の臨床試験に着手していることを明らかにした。

インドネシアはコロナ感染者数、感染死者数で東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国中最も多い数字、感染者数は10万人超、感染死者数は5000人以上(8月1日現在)となっており、コロナ感染の拡大防止が政権にとって最大の政治課題となっている。そのため、中国とのワクチン製造分野での協力も「背に腹は代えられない」状況での苦肉の選択となった。

しかし、こうしたジョコ・ウィドド大統領の対中協力姿勢に中国側がコロナ・ワクチン製造での協力の見返りとして何らかの政治的要求を出してくるのではないかとの警戒感があることも事実だ。

 

「コロナ対策と海上権益やインドネシア人船員への人権侵害事案は全く別の次元の話である」というインドネシアの基本的立場に、果たして中国がどこまで理解を示すのかが注目されている。