中国漁船「インドネシア人船員遺体海中投棄」にブチ切れた政府の矛盾

ワクチン開発は中国頼みの風見鶏外交
大塚 智彦 プロフィール

さらに4人の遺体投棄が発覚

IMIC創設を急がせた背景の一つとして、2019年11月から次々と明らかになった、中国漁船に乗り組んでいるインドネシア人船員への人権侵害問題がある。

インドネシアでは4月末に韓国・釜山に寄港した中国漁船で、太平洋サモア沖海域で操業中に死亡したインドネシア人男性乗組員の遺体を海中に投棄していたことが同僚によって撮影された動画で明らかになり、大きな問題となった。

中国漁船側は「止むを得ない措置であり、丁重に葬った水葬である」と主張するも、航海中の低賃金、18時間連続労働、海水飲用強制など過酷な労働環境が次々と明らかになった。

インドネシア人船員の遺体の海中投棄は別の中国漁船でも行われており、インドネシア側は中国に遺憾の意を示すとともに国連人権理事会(UNHRC)に問題提起する事態に発展した。

その後もマラッカ海峡で過酷な労働環境から逃れるために中国漁船から海に飛び込んで脱出したインドネシア人船員2人が漂流の末救出される事件も起きるなど、中国漁船の人権侵害がインドネシア、中国の新たな2国間外交問題としてクローズアップされていた。

インドネシア外務省や外国船で働くインドネシア人船員を支援するNGO「インドネシア船員権利保護監視団(DFW)」などによると、5月6月に操業中の中国漁船で死亡し、遺体が海中に投棄されたインドネシア人がさらに4人いることがわかり、これまで判明した死亡事案は合計で12人となった。

この4人に関してはシンガポール、北京、広州にあるインドネシアの出先機関を通じて死亡船員の遺体の引き渡しを当該中国漁船に求めたにもかかわらず海中投棄されたという。

外務省では「止むを得ない事情の時は航海中の死者を水葬とするのは海の慣習といわれているが、寄港して遺体を下ろすことができない、冷凍設備での保存ができないなどの状況での最後の手段であるべきだ」と中国側に釘をさし、当該中国漁船がそういう状況にはなく、人権上問題があるとの立場を明らかにしている。

24時間のホットラインでインドネシア船員からの連絡や情報提供を受け付けているDFWによると、依然として中国漁船に乗り込んだことになっている2人のインドネシア船員が行方不明となっているとして、さらなる情報収集を続けている。

 

こうした外国漁船に乗り込むインドネシア人船員、海賊被害にあったインドネシア船籍の船舶などは、これまでどの組織・機関に連絡すればいいか必ずしも明確ではなかった。が、今後はIMICに連絡を一本化し、IMICから事案の内容に応じて海軍、沿岸警備隊、国家捜索救助庁などに通報、至急の対応、支援を要請することで迅速救援、容疑者・容疑船舶の拘束、拿捕を実現したいとしている。