初の赤字転落…!JR東日本の決算が物語る「コロナショックの衝撃」

運賃やダイヤなどが変わる可能性も?
佐藤 信之 プロフィール

定期券のあり方をどう変えるか

さらに、定期券のあり方について、「運賃制度そのものをどう抜本的に変えていくかを考えていきたい。一例としては、テレワーク等の働き方に合わせた新しい商品の提供等が考えられる」と説明する。具体的には、すでに報道されている時間帯別運賃のことであろう。

通勤定期券は、大正時代の急速な工業化のなかで、工員向けの割引運賃制度として登場した(工員定期券)。定期券自体は明治の半ばには存在していたが、その時代は、鉄道運賃は所得水準に比べて割高であり、鉄道で通勤できる人は、政治家や経営者、軍人といった一部の階層の人々に限定されていた。

定期券は、その都度乗車券を買う必要のないものという程度の意味合いで、割引も無かった。まもなく回数券に変わった。

今の通勤定期は、大正時代に、もともと社会政策的な意味合いで販売されるようになったが、今後コロナ後の働き方の変化、とくにテレワークの普及による通勤移動のニーズの減少に合わせて、考え方を大きく変える必要が出てきた。

大都市の鉄道会社は、通勤混雑の緩和のために巨額の費用を投入してきた。昼間の輸送力だけならば、経費、人件費は大幅に縮減できる。その通勤時のためだけに追加された輸送能力に関する負担は、本来通勤時間帯の利用者に賦課すべきものである。

なのに現実には割引された通勤定期券で、昼間の旅客よりも少ない金額で利用できるようになっているのである。昼間の旅客からすると、他人のコストを負担させられている訳で、不公平となっているといわざるを得ない。

ピーク時の旅客に割高な運賃を課すことは、古くからピークロード・プライシング(peak load pricing)として議論が続いていた問題であるが、紙の定期券・乗車券を使っている時代には、割増運賃の設定時間を区切る方法が決まらなかった。

 

今では、JR東日本の場合はプリペイド式のIC乗車券Suicaの普及が進み、改札口を入る時刻により運賃の引き落とし額に差をつけることが可能となった。ただ、問題なのは、いまだに紙の乗車券を併用しているという点である。

Suica定期券も、紙の時代と同じく1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月間の定額であり、乗車時刻で負担額を変えることができない。逆に言うと、紙の乗車券や定期券を廃止できれば、いろいろなことができるということもできる。