# 新型コロナウイルス

薬か毒か?「ベーシックインカム」待望論が抱える“残酷”なリスク

導入すれば「犠牲」になる人も
鷲尾 香一 プロフィール

民主主義を衰退させる危険性も

最後に重要な点は、BIによって生活を支えられる上で、国民と国家の関係をどう考えるのかだ。

現在ハーバード大学ケネディ行政大学院教授であるダニ・ロドリックは「国際政治経済のトリレンマ」(以下、トリレンマ)で、「国家主権」、「民主主義」、「グローバリゼ-ション」の3つの政策目標・統治形態のうち、一度に2つは達成できるが、3つすべてを達成することはできないと唱えた。

今、世界では反グローバリゼーションの動きが台頭し始めている。トリレンマでいうところの「グローバリゼーションと民主主義」から「民主主義と国家主権」への動きだ。

米国では、2017年から政権を担うドナルド・トランプ大統領が「自国第一主義」を掲げ、自国の利益のために関税の引き上げを打ち出し、自国の経済的利益の回復を図っている。

欧州でも、英国が国家主権を主張し、自国の利益優先のためEU離脱を強硬に推し進めた。欧州ではネオナチ運動も深刻化している。他の国々でも自国第一主義を掲げるポピュリスト政権が誕生している。

こうした「民主主義と国家主権」のバランスが微妙な時期に新型コロナは発生し、世界中の国々が生活の基盤に対する国の政策への依存度を高めている。つまるところ、新型コロナ対策は国家主権を強め、民主主義を衰退させる動きを増幅することに繋がる危険性を孕んでいるのではないだろうか。

 

もちろん、新型コロナ禍の中で国民が生命を守るために国の政策に頼ることを否定しているわけではない。だが、安易にBIやBIもどきの政策に頼ることの危険性も十分に考慮する必要があるだろう。

BIやBIに準ずる政策は、国民の多くを対象とし、結果的に犠牲にするものも出てくる。それだけに国民的な議論を十分に行うことが必要だ。