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薬か毒か?「ベーシックインカム」待望論が抱える“残酷”なリスク

導入すれば「犠牲」になる人も
鷲尾 香一 プロフィール

支給金額、期間、財源をめぐる問題

生活困窮者や貧困層には現在でも、制度上の問題や支給額の多寡はさておき、生活保護制度がある。生活保護における支給額は、新型コロナ禍でも減額されるといった影響は受けていない。

BIという制度を社会制度の一環として取り入れる検討を行うのであれば、「貧富の差に関わらず、すべての国民を対象にする」ことを前提に議論を行うことになろう。

BIの制度設計で最も重要なのは、支給金額と支給期間、そして財源問題だろう。

特別定額給付金の10万円という金額にも、様々な意見が出された。例えば単身世帯であれば支給額は10万円だが、幼児2人と夫婦の4人世帯なら40万円だ。年収が200万円でも、1000万円でも同額が支給される。

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BIはすべての国民を対象にすることを前提とすれば、果たして、所得格差や世帯人数に関係なく、“BIとは、そういう制度だ”と割り切って考えられるだろうか。

BIの基本は「生活に最低限必要な現金を支給」にある。特別定額給付金10万円は生活保護制度の支給額を下回っており、生活に最低限必要な金額とは言えまい。10万円の特別定額給付金ですら、予算額は約13兆円にのぼり、2020年度当初予算102兆円の1割を超えている。

国民民主党の玉木雄一郎代表は政策にBIを掲げている。玉木代表の掲げるBIは、「他の社会保障制度や減税政策を整理統合したうえで、給付と税還付を組み合わせた」もので、特別定額給付金のような一時金ではなく、毎月給付され、永続的に続く制度を想定している。

特別定額給付金と同額の10万円を毎月、国民全員に支給しようとすれば、2020年度当初予算102兆円をはるかに上回る150兆円を超える財源が必要になる。それでも、BIの基本である「生活に最低限必要な現金の支給」は不可能だ。