# 新型コロナウイルス

薬か毒か?「ベーシックインカム」待望論が抱える“残酷”なリスク

導入すれば「犠牲」になる人も
鷲尾 香一 プロフィール

識者の意見も千差万別

この提案に対して、賛意を示す意見が多く見られたのと同時に、新型コロナ禍の日本でのBIについても、「そもそもBIって何?」「日本にも生活に困っている人は多くいるのだからBIを行うべき」との意見から、「BIは他の(年金や健康保険制度など)社会保障を犠牲にするため、結果的に国民負担が増えることになり、行うべきではない」という反対意見まで、様々な意見が出ている。

BIは「老若男女を問わず、就労や資産の有無にも関係なく、すべての国民に対して、無条件で生活に最低限必要な現金を支給する」というのが基本的な政策だ。すでに、1960~70年代には欧米で議論が行われてきたが、新型コロナ禍を契機に再び議論が活発化している。

多くの経済学者、社会学者、エコノミスト、政治家までもがBIに対する意見を述べているが、その意見は“千差万別”だ。それはBIの制度設計に多くの検討すべき要素がある点に起因する。

まず、BIの対象についてだ。国連開発計画も同様だが、新型コロナ禍でのBI議論は、「生活困窮者、貧困層に対する“セーフティネット”としての役割」が強い。

前述したように、BI政策の根本は、“貧富の差に関わらず”すべての国民を対象にする点にある。生活困窮者や貧困層のみを対象とするのは、厳密に言えばBIではない。

 

その点では、現時点では1回のみだが、「特別定額給付金」はBIの条件に沿ったものだった。それでも、「新型コロナで収入面の影響を受けていない人や子どもにまで支給するのはおかしい」といった声に始まり、「所得制限を付けるべき」「年齢制限を付けるべき」など様々な意見が錯綜した。

中には、広島県の湯崎英彦知事や兵庫県加西市の西村和平市長のように、「収入面で新型コロナの影響を受けていない」ことを理由に職員の特別定額給付金を搾取しようとする事態まで発生した。