東千葉メディカルセンター

入院中の父はなぜ、「病院で餓死」しなければならなかったのか

想像すらしていなかった事態が起こった

家族に説明はなかった

5年後、日本は国民の4人に1人(約2200万人)が75歳以上という超高齢社会を迎える。加齢など、何らかの事情で、もし口から食事が取れなくなったらどうするか。胃ろうなどの方法で栄養を補給するか、それとも何もせずに死を待つのか。悩ましい問題だが、いま、栄養補給を巡り、注目すべき裁判が東京高裁で行われている。

入院先の病院が必要な栄養補給を怠ったために父親は餓死した」として、千葉県在住の男性が、父親が入院していた病院を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしているのだ。

「餓死」裁判を起こしたのは千葉県八街市在住の谷口正さん(仮名・67)だ。

訴状によると、正さんの父親の幸一さん(同・享年93)は、2016年9月30日、かかりつけ医(クリニック院長)の紹介で、地方独立行政法人「東金九十九里地域医療センター」が運営する「東千葉メディカルセンター」(千葉県東金市・増田政久理事長)に「栄養補給目的」で入院した。

東千葉メディカルセンター
 

ところが病院側は生命維持に必要な量を大幅に下回る程度の栄養量の補給に留め、それを入院期間中継続したため、入院49日目に幸一さんは栄養失調で餓死したという。栄養補給量が生命維持必要量をはるかに下回っていることについて、病院側は入院期間中に、本人と家族に説明せず、同意も得ていないという。

被告の東千葉メディカルセンターは14年に開院した救急・急性期医療を中心とする3次救急医療(重症・重篤患者向け)病院で病床数314。千葉大付属病院、亀田総合病院などの大病院が近くにあるため、開院前から救急患者の需要不足が指摘され、新聞・雑誌などが、同病院の赤字体質と医師・看護師不足を何度か報じている。

正さんは入院前、父親の死を想像すらしていなかった。紹介してくれた掛かり付け医も同じだった。正さんによると、幸一さんの死を伝えたとき、掛かり付け医は「驚いた、信じられない」と絶句したという。

幸一さんはなぜ亡くなったのか。膨大な裁判書類や診療記録、正さんや医療関係者らの証言をもとに幸一さんが死に至った経緯を、上下2回に分けて検証する。