「え、そんな技あったんですか!?」

ホテルの部屋で順番にシャワーを浴びた後、ベッドの上でサービスが始まる。通常のマッサージをひと通りやってから、徐々に手や舌を使ったプレイへと移行していくのだが、その技術に私は驚愕した。マサキは10本の指すべてを使ってあれやこれやしている。「え、そんな技あったんですか!?」と思わず聞いてしまった。35年(当時)生きてきて、指や舌の動きに、こんなにもバリエーションがあることを初めて知った。私がこれまで出会った男性たちが手抜きをしていたのか、それとも、やり方を知らないだけなのか……。

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風俗なのだから当たり前だと思う人もいるだろう。でも、男性向けAVがあまりに普及してしまったので、男性がどんな愛撫を求めているのか、女性はなんとなく知っている。“プロ”の人がやるようなことをふつうに求めてくる男性も少なくない。でも、男性は女性ほど、相手がどんな愛撫を求めているか知識として知る機会がない。

男性向けAVで描かれる女性への愛撫は、肌に触れた途端に声を出すくらい多分に演出が含まれているし、そもそも女性も、自分がどうされれば気持ちいいか知らない人が多いので教えることができない。ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)」のサマンサのように、男性に指の動きをミリ単位で的確に指示できる女性なんてそうそういないのだ。

男性が気持ちよくなるための情報は世に溢れているが、その逆はあまりに少ない。A店の女性講師が教える“奥義”を世に広めたら、日本の女性たちはもっと幸せになれるんじゃないかと本気で思った。

しかし、テクニックだけではどうにもならないことがある。マサキの指・舌使いは素晴らしかったけれど、我を忘れるほど気持ちいいかというと、そうではなかった。それは恐らく、私の精神面の影響が大きい。緊張もあるが、いつもの癖でどう反応すれば相手が喜ぶかばかりに気を取られ、下で起こっていることにぜんぜん集中できなかったのだ。対価を払っていても、二度と会わない相手でも、これである。結局、相手や状況が変わっても、自分が変わろうと努力しない限りどうにもならないということを痛感した。