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TikTokまで標的!激化する米中覇権戦争、ソフトバンクも渦中に?

それでも止まらぬ中国投資
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

中国は逆に門戸開放

中国への外資流入が止まらないもう一つの理由は、中国政府が近年、積極的に金融市場を門戸開放していることがある。米国が資本市場からの中国締め出しを強めるのと全く逆なのが興味深い。

今年の4月、中国は証券業と生命保険について外資規制を完全撤廃した。外国証券や生命保険会社は100%子会社を中国に設立できることになったのだ。特に証券業では、実施を当初計画より8ヶ月前倒しする積極ぶり。ブラックロックなどの大手金融会社数社が、早々と完全子会社のライセンス申請を行った。日本の野村や大和も過半(51%)出資の子会社を作っている。

さらに、3000兆円規模とされる中国決済サービス市場の解放も始まった。オンライン決済のペイパル(PayPal)は中国のGoPayの7割を買収し、アメックスは外資系として初めて、人民元建てでのカード決済事業を行う許可を得た。

株式市場の規模を比べれば分かるが、資本市場は中国より欧米の方が大きく大手機関投資家へのアクセスも格段に良いので、締め出された場合のデメリットは中国の方が大きい。中国本土での門戸開放は、そのヘッジでもあるだろう。しかし、最終的には香港・上海・深センを、ニューヨークのウォール街やロンドンのシティーを抜く世界の金融センターに育てようという野心も透けて見える。

IPO(株式初公開)による資金調達では、ロイターの集計で2020年上期に中国企業が世界の半分を占めるなど、すでに中国が世界を圧倒的する。その中でも、とりわけ注目されるのが、10億人が使う決済サービス「アリペイ (支付宝)」を運用する「アント・フィナンシャル(螞蟻金融服務)」の超大型IPOだ。

ソフトバンクグループ(アリババ の25%を保有、アリババ がアントの33%を保有)の株が最近上がっているが、想定される時価総額は2000億ドル(約22兆円)以上と言われる。調達額はその5〜10%と言われ、過去最大となる可能性がある。巨大なアリ(アント)によるモンスター級IPOだ。

今の政治状況に鑑み、アントは香港と上海の「科創板(中国版ナスダック)」に重複上場し、米国での上場は避ける見通しだ。

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米中の覇権争いの中で、日本企業の対応も難しくなってきた。

中国・アジアマネーの取り込みでは、「ユニクロ」のファーストリテイリングは香港にもセカンダリー上場をしている。今後は、こうした日本企業が増えるかもしれない。

一方、米国は、ファーウェイやハイクビジョンなど特定中国企業の製品を使用する企業を、米国政府機関との取引から締め出す措置に出た。今後は対象が拡大する恐れもあり、中国企業のサプライチェーンに関与する日本企業も敵視されてしまうことになりかねない。

どちらかを選べと踏み絵を突きつけられる場面が増えそうで、漁夫の利を得られると喜んでばかりいられなくなった。