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TikTokまで標的!激化する米中覇権戦争、ソフトバンクも渦中に?

それでも止まらぬ中国投資
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

米金融市場からの中国締め出し

ヒト、モノの次にターゲットになるのは、おカネの流れだ。ここ数ヶ月を見ても、米国の資本市場からの中国締め出しの動きが顕著になっている。

5月20日、米国議会上院は、一定の開示基準を満たさない外国企業の上場廃止を可能にする「持株外国企業説明責任法(Holding Foreign Companies Accountable Act)」を全会一致で通過させた。下院審議はこれからだが、もし法案が成立すれば、米国に上場する外国企業は、1)「外国政府に保有されたり支配されていない」という証明をしなくてはならず、さらに2)米国当局による会計検査の受け入れが義務づけられる。

明言こそされないものの、確実に中国を念頭に置いている。

現時点で米国で株式(ADR、米国預託証券)を上場している中国企業は230社程度あり、その時価総額合計は1.8兆ドル(約200兆円)に上る。では、この法律が成立した場合、果たしてどれくらいの中国企業が米国で上場継続できるだろうか。

まず、米国に上場する中国企業には、シノペック(中国石油加工)や中国東方航空、中国電信など、10以上の政府系企業が含まれる。これらの企業がまず最初の条件に引っかかる。

でも、二番目の条件を見れば、全ての中国企業が米国で上場廃止となり得る。なぜなら、法案ではPCAOB(米国上場企業会計監視委員会)による会計監査の検証を3年続けて拒否した場合は上場廃止とされるが、現状では中国政府が内政干渉だとして、中国と香港で会計監査を受ける中国企業の資料受け渡しを一切拒否しているからだ。

中国企業の開示の信頼性をめぐる問題は、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)の粉飾決済が発覚し、6月にナスダックから上場廃止となったことで改めて浮き彫りになった。

Photo by Gettyimages
 

ラッキンは創業からわずか2年で中国全土に4500店舗を展開。スタバを追い抜いて注目され、世界中の大手投資機関が競うように投資していた。しかし、不正疑惑が伝えられた4月2日、株価は1日で8割下落した。沸騰したコーヒーによる、思わぬ大ヤケドだ。

背景には、そもそもSEC(米国証券取引委員会、PCAOBの監督機関)がお墨付きを出せないような企業の上場をなぜ容認してきたのか、という米国自体の自己矛盾もある。市場の監督と投資家保護というSECの存在意義を考えれば、機関投資家はまだしも、個人投資家の保護については現状の方に問題がある。

外国企業説明責任法案は政治色が強いが、上記の点からは合理性もあるので、成立する可能性は高いのではないかと思う。ただし、法案には「3年」という時間軸が盛り込まれているので、現実的には投資家保護より中国との交渉カードを増やすのが狙いだろう。