# 米国 # 中国

TikTokまで標的!激化する米中覇権戦争、ソフトバンクも渦中に?

それでも止まらぬ中国投資
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

米国にもティックトックユーザーが7000万人程度いると推計されている。しかし、民主国家である米国が、消費者向けのサービスをめぐって、外国企業のサーバーと米国ユーザーの間をブロックするという事態はこれまで前例がない。それをやれば、中国の「グレート・ファイアーウォール(金盾)」と同じネット検閲になってしまう。

代わりにトランプ政権は、外国企業による米国企業の買収を安全保障面から審査する「対米外国投資委員会(CFIUS、“シフィウス“)」をツールにする。国防権限法案によって権限が強化されたCFIUSは、昨年からバイトダンスの審査を続けてきた。

CFIUS勧告を受ける形で大統領令が発動されれば、バイトダンスがティックトックの売却か、米国市場からの撤退を迫られる可能性がある。また過去に10億ドルで買収した米国子会社ミュージカリーの売却を強制されたり、アップルやグーグルのオペレーティングシステム上から締め出されることも考えられる。

――こう書いていたら、事態は急展開。マイクロソフト(MS)が、サティア・ナデラCEO(最高経営責任者)とトランプ大統領との週末2日の電話会議を受け、CFIUSの監督の下、9月15日を期限にティックトック買収の交渉を進めていることを公式ブログで明らかにした。一時、禁止にこだわっていた大統領は方向転換したらしい。

Photo by Gettyimages
 

そこには大統領選挙も絡み、禁止と米国企業化のどちらが得策か、という判断も働いたようだ。ティックトックユーザーには、ミレニアルより若い「Z世代」のリベラルなユーザーが多い。利用禁止案にはすでに猛反発が起きており、トランプ大統領の公式選挙アプリ(Official Trump 2020 App)に「星一つ(最低評価)」を残す「リベンジ」キャンペーンも始まっていた。

バイトダンスはこれまで、ベンチャーキャピタル(VC)市場でウーバーを超える「ユニコーン」(私募投資市場で時価総額1000億ドル以上をつける未公開企業)として期待され、ソフトバンクの「ビジョンファンド」 も30億ドルを出資している。未公開市場での企業価値は、3月時点で1000億ドル程度と推定されていた。

MSへの事業売却が上手くいく場合と、万一破談となって利用禁止になってしまうのとでは、値札がまるで違ってくるから正念場だ。

CFIUSは2018年、アリババ傘下のアントフィナンシャル(後述)による米国の資金送金サービス大手の買収を認めず、案件が流れた経緯がある。ソフトバンクの投資事業にも度々影を落としている。