月が魔法にかかったらしい。
と言っても、短編ビデオソーシャルアプリ「ティックトック(TikTok, 抖音)」での出来事だ。世界のティーンが夢中になるティックトックには、ハッシュタグ(#)ごとに豊富なサブカルチャーが存在する。その一つにウィッチトック(#wichtok)という「魔女」や呪術のコミュニティーがあって、最近、新米の魔女(#babywich)らが月に呪いをかけたらしい。ベテラン魔女達からは、自然界に手を出すな、と叱られた。
おばさん筆者には何のことだかさっぱり分からないし、月も健在だ。むしろ存続が危ぶまれたのは、ウィッチトックの魔女の方だ。トランプ米大統領が7月31日、国家安全保障を理由に、中国企業バイトダンス(北京字節跳動科技)が運用するティックトックを禁止する可能性に言及したからだ。
ティックトックのアクティブユーザーは世界8億人、今年の上期にはダウンロード数で世界のアプリの記録を塗り替えた。欧米で中国産ソーシャルメディアが市場を席巻した初めてのケースだ。
しかしティックトックやウィーチャット(微信)などの中国アプリについては、セキュリティーの問題が専門家から指摘されてきた。例えば、ユーザーがキーボード入力すると、アプリが許可なしにクリップボードの内容を読み取ることなどが明らかにされている。
一足先に禁止に踏み切ったのは、中国との国境紛争を抱えるインドだ。
中国政府による情報収集を警戒したインド政府は、ティックトックを含む59の中国製アプリを6月に禁止した。これによって、2億人とも言われたインドのティックトックユーザーが一瞬にして消えてしまった。その中には15秒の動画アップロードに身を削りボリウッドを目指していたアプリ有名人や、「チキンレッグをひたすらうまそうに食べるおじさん」も含まれる。