日本政府は国民を守らない…「原爆は怖くない」ウソだらけの安全神話

コロナ対策でも同じことが起きている
大前 治 プロフィール

終戦まで貫かれた政府方針

読売報知だけではない。同じ8月14日付の朝日新聞には「熱線には初期消火」という見出しの記事が載り、「一時噂されたごとき威力を持ったものではなく、防御さえしっかりやれば決して恐るべきものでないことが分かってきた」とある。

家屋が倒壊してから出火するまでに時間がかかるから、初期消火をすれば火災を防げるとも書いている。

猛烈な熱線と爆風で一瞬にして都市が破壊され、人々は全身やけどに苦しむ。町全体を襲う猛火が迫る。そのなかでも逃げずに初期消火せよというのである。

これが、終戦を告げる玉音放送の前日の新聞報道である。「逃げずに火を消せ」という防空法は、終戦前日まで方針変更されずに貫徹されたことが分かる。

陸軍監修のポスター
 

過去のことと笑ってはいけない

これを過去のことと笑ってはいけない。理由は2つある。

第1に、原子爆弾の被害者は現在も苦しんでいる。「逃げずに火を消せ」という防空法のもとで空襲被害を受けた人々の苦しみも続いている。決して過去のことではない。

第2に、被害の実相が分からず、政府の対処法が正しいか否かを国民が判断できない状態というのは、今のコロナ禍をめぐる日本の現状と共通している。今の私たちが、過去を笑うことなどできないのである。

もちろん今は言論の自由があるから、政府のコロナ対策に対して賛否が噴出して議論が交わされている。戦争反対というだけで逮捕された過去とは同一視できない。

しかし、政府の方針(布製マスクの配布、PCR検査の抑制、不十分な補償など)に対して、「非科学的」とか「国民生活への配慮がない」という批判がなされたときに、政府は十分な根拠を示して国民への説明を果たしているだろうか。

科学的な根拠も示さず、国民の願いや疑問に真摯に耳を傾けないままに、ただ「政府の施策を信用せよ」というだけでは、戦時中と変わらない。

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