男性たちの自己矛盾と自己嫌悪

聞けばSさんは以前よりフェミニズムの問題に関心を持ち、SNSを中心にジェンダー関連のニュースや言説に日々触れていた。そこでは社会におけるジェンダー構造の不均衡が指摘され、それらに異議を唱える声が盛んに飛び交っている。性差別的な広告表現や女性蔑視的な発言をした人が炎上することも日常茶飯事だ。

さらにSさんは数年前、かつて姉が親戚から性暴力を受けたものの、親戚づき合いというしがらみの中で曖昧なまま揉み消されてしまったという事実を初めて知ったという。そのことに深いショックと怒りを覚え、フェミニズムの問題に興味を持ちはじめたのだ。

桃山商事として相談を受けるのは女性からがほとんどだが、男性から受けることも稀にある。その際、ジェンダーの問題に意識的な男性ほど「男性性に付随する加害者性」に悩み、それが生きづらさにつながってしまう傾向があるのではないか、と感じる。

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例えば大学生の相談者Mさんは、恋人に対して時にモラハラのような行為をしてしまう自分に苦しんでいた。大学で心理学やジェンダー学を学び、男性の威圧的な態度や侮蔑的な振る舞いが女性の心にどのような傷を与えるか、頭では理解しているはずなのに、恋人を議論で打ち負かしたい、恋人の行動をコントロールしたいといった欲望に駆られ、ひどい態度を取ってしまう。かと思えば、自分のすべてを受け入れて欲しい、罪悪感や加害意識の苦しみを癒やして欲しいという思いから、まるで赤子のように恋人に甘えてしまう自分にも嫌悪感を抱いていた。

Mさんからは心理学やジェンダー学のタームで自身のことを説明しすぎているような印象を受け、そのあたりも気になる部分ではあったのだが、とにかく彼は「自己矛盾」というものに最も苦しんでいた。