恋バナ収集ユニット「桃山商事」の一員として、人々の失恋体験や恋愛相談に耳を傾け、そこから見える恋愛とジェンダーの問題を発信している清田隆之さん。彼が現代における「男性性」の問題ととことん向き合ったのが、自身初のエッセイ集である『さよなら、俺たち』(STAND!BOOKS)だ。

日本は「ジェンダー・ギャップ指数」で今年、過去最低の121位(153カ国中)を記録した“ジェンダー後進国”ではあれど、それでも若い世代ではジェンダーに対して意識の高い男性が少なくない。そんな男性たちのあいだで起きている変化について、同書の一部を抜粋・再構成しお伝えしたい。

「思い起こすのもおぞましい行動」

以前、東北地方の大学に通う男子学生(Sさん)からこのような相談を受けた。3年生である彼は登山サークルで幹部の役職に就いており、トレーニングのメニューを考えたり、人間関係を調整したりという職務を担っていた。

ある時、1年生の女子部員が練習中に足をひねり、歩行困難な状態になってしまった。部員の怪我対応も彼の担当であったため、その女子部員を車に乗せて病院まで付き添った。幸いにも怪我は足の筋を痛めた程度で済み、数回の通院で完治した。

写真はイメージです(以下同)〔PHOTO〕iStock

ところがSさんは、この時の自分を「思い起こすのもおぞましい行動を取ってしまった」と振り返る。実際、この一件をきっかけに心を病み、その後2年間の休学を余儀なくされている。Sさんは一体、何をしてしまったのだろうか。

それは、女子部員に対する「恋愛感情」だった。彼は一連のコミュニケーションを通じ、彼女に対するほのかな好意の芽生えも感じたそうだ。しかしSさんは、ある一件を境にそういった気持ちに急ブレーキをかけることになる。