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19人を殺害する前に植松聖は「宇宙から来た」と言った…一体なぜか

相模原障害者殺傷事件が僕たちに突きつけたもの【第6回】
映画監督・作家の森達也氏が3月19日、死刑判決直後の植松聖と面会した。2016年、入所中の知的障害者19人が殺害されたあの事件の深層とは何か?

第1回はこちら:相模原障害者殺傷事件とは何だったのか?「普通の人」植松聖との会話
防犯カメラに映る植松聖〔PHOTO〕gettyimages

「宇宙から来た」発言を考える

犯行時の植松は施設の職員たちに対して、「宇宙から来た植松だ」と告げている。気になる言動は他にもたくさんあるが、とりあえず今は「宇宙から来た」発言について考える。

まずはこれ見よがしだ。わざわざ犯行直前に口にすることだろうか。だからこの事実だけを取り上げれば、悪ふざけと捉えるべきかもしれないし、犯行後を見据えて周到に精神障害を装ったとの見方も可能だ。実際に判決文は、この発言も大麻精神病の影響で常軌を逸していたエビデンスのひとつである、とする工藤鑑定について、以下のように一蹴している。

なお、被告人は、一部の職員に対して、自分が宇宙から来たという突飛な発言もしているが、それ以上に、自分が宇宙人であることを前提にしたと思われる具体的な言動は見当たらないから、真に宇宙から来たと思い込んでした発言とは考えにくく、むしろ、本件犯行の興奮状態における発言として理解することができる。

……思わず「そっちか」と言いたくなる。一蹴の方向が違う。微妙な違いではない。僕が考えていた角度とは、かなり大きなずれがある。特に、このパラグラフの最後の記述「本件犯行の興奮状態における発言として理解することができる。」については、まったく同意できない。興奮したときに自分は宇宙から来たと口走ることは、正常の範囲内なのか。多くの人が言うことなのか。

 

本件犯行の興奮状態における発言として理解することができる。

本気で書いているのだろうか。興奮したときに自分は宇宙から来たと口走ることは、正常の範囲内なのか。

確かに自分が宇宙人であることを前提にした言動は他に確認できない。ただし事件のかなり前から植松は友人たちに、宇宙人について(イルミナティカードとの関連で)頻りに話題にしているし、何よりも大島理森衆院議長に渡そうとした手紙には、以下のように記述している。

外見はとても大切なことに気付き、容姿に自信が無い為、美容整形を行います。進化の先にある大きい瞳、小さい顔、宇宙人が代表するイメージ(中略)私はUFOを2回見たことがあります。未来人なのかも知れません。

自分を宇宙人であるとは記述していない。でも衆院議長宛て(最初は安倍晋三首相に渡すつもりだった)に書いた重要な(本人に手渡してもらうために公邸まで二日にわたって出向いて土下座までしたのだから)手紙に、こうした記述をすることの整合性について、青沼潔裁判長は何と説明するのだろう。とにかく正常であるという方向に持ってゆきたい。その強いバイアスが判決文の記述をちぐはぐにしている。いやちぐはぐのレベルではなく破綻させている。僕はそう感じる。