ライブ中止、卒業保留…コロナが「会いに行けるアイドル」ブームにもたらしたもの

今、かつてない苦境を迎えている
岡島 紳士 プロフィール

プロモーション機会の喪失…現場発信での“ストーリー”が生まれない

ここまでライブの金銭的な面について書いて来たが、ライブにはそれ以外にもアイドル活動をして行く上で重要な要素がいくつもある。まず、ライブ自体にプロモーション効果があることだ。複数のアーティストが出演するライブを“対バンライブ”“対バン”と呼ぶが、この、他のアイドルと共演する対バン自体が、アイドルにとってのプロモーションとなっている。元々のファン以外の観客に生のパフォーマンスを見て貰える機会があることは、新規のファンを獲得するチャンスとなるからだ。

ライブがなければ(多いアイドルで月に15回以上出演することもある)そのプロモーションの機会も失われる。大手芸能プロやメジャーレーベルに所属しておらず、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアに簡単に出ることのできないアイドルにとっては、ネットで自主的に発信する以外、プロモーションの機会がほぼなくなっている状況だ。

結成から6年、8月16日にラストライブを開催するハコイリムスメ(公式HPより)
 

次に、先ほど触れたように、ファンとアイドルが1つのチームのように連帯意識を持ち共同作業的に規模を拡大させて行くことは、今のライブアイドルの活動展開の基盤となっている。ライブがなければそこに連帯意識は生まれ難いだろう。また、アイドル現場に通うことは、アイドルの成長を連載マンガを読むように体験し続けることでもある。そこで自然発生的に生まれるストーリーは、ファンにとってアイドルに対する没入感や共感をより強めて行く。そしてそのストーリーは、他のアイドルにはないオリジナリティーとなり、新たなファンを呼ぶ大きな魅力となり得る。

ライブ配信はリアルな現場と比べれば情報量が遥かに少なく、アイドルとファン及びファン同士がリアルと同様にコミュニケーションを取ることも難しい。連載作品ではなく読切作品のようにライブごとにストーリーは分断され、共通認識としてのグループを通したストーリーは生まれにくいだろう。