ライブ中止、卒業保留…コロナが「会いに行けるアイドル」ブームにもたらしたもの

今、かつてない苦境を迎えている
岡島 紳士 プロフィール

コピー不可能な“生の体験”にこそ価値。配信はライブの代替にはなり難い

しかしながら、政府が提唱するガイドラインに則ってライブを再開したとしても、以前と同じだけの利益を上げることのできるアイドルはほとんどいないだろう。

例えばキャパ200人のライブハウスで主催ライブを開催する場合を計算すると、観客収容率が最大50%なら最大100人だが、最低1mの観客同志の間隔を守ろうとすると、会場の面積から、多くても30人程度が限界となる。200人満員の時と同じだけのチケット売上を見込むなら、単純計算で6倍以上のチケット代に設定しなければならないが、それは現実的ではない場合が多いだろう。また、そもそも、ライブに通う観客の数自体が減っているとも言われている。現在のコロナ禍の状況を考えれば、ライブ会場への足が遠のいたとしても、仕方がないだろう。

8月30日に2019年度卒業公演無観客配信を行うさくら学院(アミューズオフィシャルウェブページより)
 

有料配信がその穴を埋められるかどうかだが、生のライブ体験と、動画配信の鑑賞は元来別物と考えた方が良い。ライブ会場における「アーティストと観客がその場にいる」という臨場感や一体感を持って、大声を出して体を動かし応援したり踊ることの楽しさは、現場にいなければ味わえないからだ。

そもそもアイドルに限らず、音楽業界では、CDの売り上げが落ちて行ったことと比例して、ライブの重要度が増して来た、という背景がある。CD不況の原因は諸説あるが、1つの大きな要因として挙げられるのが、インターネットで容易にコピー可能な音源が入手できる状況になったことだ。コピー不可能な“生の体験”に価値があるからこそ、ライブアイドルのシーンは活性化し、市場を広げて行くことができた。

ライブだけなく、特典会も同じことだ。生のアイドルと直接会話し、握手をしたりチェキを一緒に撮れることに大きな価値がある。元々の規模感がある程度大きかったアイドルには、しばらく買い支えるという意味も含めて、WEB特典会に参加するファンも多いだろう。しかし、現在の状況が続けば続くほど、それは先細りになる可能性が高い。

ブレイク以前のライブアイドルの収入源は、グッズ販売を含めたライブ会場での特典会と、ライブのチケット料金が、そのほとんどを占めている。どちらの数字も大幅に落ちている今、アイドルは極めて深刻な状況に置かれているといえる。