ライブ中止、卒業保留…コロナが「会いに行けるアイドル」ブームにもたらしたもの

今、かつてない苦境を迎えている
岡島 紳士 プロフィール

拡大するアイドルへの感染、大型フェスのオンライン化

アイドル自身にも感染は相次いでいる。AKB48の田北香世子は7月上旬に発症し、7月19日に陽性が判明、20日に入院した。26日に退院したものの、現在も自宅療養を続けている。同じく48系グループのNGT48の清司麗菜も7月28日に陽性が発覚、追加の検査を進めている。コレットプロモーション所属のナナランドは、メンバーの1名(氏名非公表)が7月21日に陽性であることが発覚。のちに他メンバー6名とスタッフ4名のうち、新たに4名が陽性であることが確認された。

また、毎年夏に東京・お台場の青海周辺エリアにて開催されている、世界最大規模のアイドルの祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL 2020」は、オリンピックの影響で元々10月2日、3日、4日に開催の予定となっていたものの、7月30日に中止を決定。「TIFオンライン」など、配信での開催を発表している。横浜アリーナにて開催されている、同じく夏恒例の大規模アイドルフェス「@JAM EXPO 2020」も、今年は8月28日、29日、30日の3日間連続の予定だったが、中止が発表されている。こちらも代替として、Zepp TokyoやZepp DiverCityなど会場を分散した上で、「@JAM ONLINE FESTIVAL 2020」が8月29日、30日に開催される。

「@ JAM ONLINE FESTIVAL 2020」に出演予定のでんぱ組.inc(公式HPより)
 

ファンコミュニティー離散の危機…アイドルビジネスの根本が崩れている

アイドル側だけではない。ファンの側もまた、ライブという“現場”を失った。ライブに足繁く通うファンにとって、アイドル現場は単にアイドルに会い、応援し、ライブを楽しむ場所というだけではない。ファンにとっては、ファン同士のコミュニティー自体に価値があり、その現場に通う大きな要因となっている場合が多い。その場がなくなっていることは、ファンにとって大きなダメージだろう。

2011年に大ブレイクしたAKB48(写真は2011年「MTV Video Music Aid Japan」) photo by gettyimages

また、拙著「グループアイドル進化論」などに繰り返し書いて来たが、そもそも、ライブアイドルのステップアップの方式は、ライブを重ねるごとにファンの数を増やして行き、アイドルとファンが混然一体となって規模感を上げて行くという形が基本となっている。ファンがスピーカーとなり、SNSや口コミを通じてアイドルの魅力を広げて行くことは、特にブレイク前のアイドルにとっては重要な役割を持つ。コロナ禍が長期間に及べば及ぶほど、コロナ禍が落ち着いた時、このファンコミュニティーが以前と同じ状態で再度形成される可能性は低くなるだろう。

つまり「人が集まること」自体が大きく制限された今は、「アイドルとファンが集まって体験を共有する」という、ライブアイドルの基盤から成り立たなくなっている状態だ。アイドルビジネスの根本が崩れている、と言って差し支えないだろう。