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「45歳、経験ゼロ」から音楽プロデューサーに…異能の「経営者」の挑戦

「唯一無二の商品づくり」でキャリアを築く
黒川 なお プロフィール

「日本の音楽マーケットは、かつて6千億円の規模で世界第2位でした。それが1998年をピークに急速に縮小し始めて、今や半分の規模です。この世界でやっていくには海外の評価が必要になる。そう強く意識するようになりました。

では、国内外で支持される音楽をやるためにどうするか。たとえば、これまで歌付きの曲をさんざんやってきて、歌ものは海外でヒットしないということを実感していたので、インストにこだわりました。最終的に弦楽四重奏にたどり着いたのは、音楽は4つの『声』があれば、ほとんどすべての曲を表現できることがわかったからです

こうして試行錯誤しながら、唯一無二のポジションを目指して多田さんは緻密に一つずつ組み立てていった。そして2016年12月、LIMが誕生した。

 

珍しい「全曲変拍子」にこだわるワケ

主だった特徴の中でも、「全曲変拍子」というのが、LIM最大の強みかもしれない。
そもそも変拍子とは、わかりやすくいえば「変わったリズム」のこと。単純な2拍子や3拍子、4拍子では表現できない独特のリズムで、一番わかりやすいのが5拍子だ。

たとえば、「ミッション:インポッシブル」のテーマやジャズナンバーの「Take Five」、ムソルグスキー「展覧会の絵」といった超有名な曲は、おそらく誰しも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。これらは変拍子の曲の代表格といえる。では、「全曲変拍子」は、それほど珍しいものなのだろうか。

「変拍子の曲は、もちろんさまざまなアーティストが取り入れています。よくあるのは、曲の一部分に変拍子を取り入れること。けれども、1曲の最初から最後まで、すべて変拍子で作られている曲は多くはありません。

しかも、変拍子の曲のみで作られたアルバムとなれば、ほとんど見たことがありません。だからこそ、『全曲変拍子』に私はこだわるんです」

他のアーティストや音楽家は、なぜ「全曲変拍子」を積極的に採用しないのだろう。

「作曲も演奏も面倒くさいからでしょう3拍子や4拍子なら何も考えずにできてしまいます。けれども、たとえば6拍子と7拍子が入り乱れたり、9拍子の曲をずっと演奏するとなると、そもそも高い技術が必要ですし、意識して集中しつづける必要があります」