# 音楽 # キャリア

「45歳、経験ゼロ」から音楽プロデューサーに…異能の「経営者」の挑戦

「唯一無二の商品づくり」でキャリアを築く
黒川 なお プロフィール

「嫁さんから言われたそのひと言は、忘れがたいです。得意先や社員にバレたりしたら、社長がおかしくなったとみんな絶対に動揺する。だから絶対にバレないようにときつくいわれました。それ以降、嫁さんの私に対する扱いは、あきらかにぞんざいになりました」

会社経営の傍ら、土日だけ部屋に閉じこもり、音楽全般をこっそり一から勉強する日々。そうした生活は2年間に及んだ。

45歳になるまでずっと外で飲み歩いていましたから、生活は一変しました」

 

音楽の先生は「カウントダウンTV」

45歳まで、そもそも音楽の勉強をきちんとしたことがないという多田さん。2年間、一体どんな勉強をして楽譜が書けるまでになったのだろう。

「初めは、TBS系の音楽番組『CDTV(カウントダウンティービー)』で勉強を始めました。浜崎あゆみ、椎名林檎、宇多田ヒカル、aiko、元ちとせあたりの動きをずっと見ていましたね。

どんな商品があって何が支持されているのか。どんな支持のされ方をしているのか。まずはそこを学ぼうと思って、毎週チェックしては、これはなぜ売れているんだろうと考える。いわば競合商品の分析ですよね。マーケットの動向を見ていました

さすがは経営者。音楽の勉強といえども、商売人視点のマーケット分析から最初の一歩を踏み出した。

「ヒット曲をずっと聞いて、ポジショニングマップを作っていると、アーティストのルーツのようなものが次第に見えてくるようになりました。この人はR&Bからきているなとか、この曲の流れはここがルーツだなといったように。

そして、ルーツとおぼしき音楽をさかのぼっていくと、ポピュラーミュージックではビートルズ、エルトン・ジョン、スティービー・ワンダーのだいたい3人に最終的に行き着きました。そこで今度は、その3人を徹底的に研究してみました。すると、音楽界全体の系譜がだいたいわかってきたんです」

ものすごい探求心である。だが、それだけではまだ譜面も読めないのではないか。実技面ではどういう勉強をしたのだろう。

「カタログギフトの冊子で、松阪牛やハムといったグルメは選ばずに、キーボードピアノを頼みました。1万円ちょっとの商品でしょうか。教則本がついていたので、基本的な楽譜の読み方や指の動かし方はそれで勉強しました。あと、幅広く学びたいと思って、近所のギター教室にも通いました」

CDTVといい、カタログギフトで注文したキーボードピアノといい、拍子抜けするほど気負わない勉強スタイルだ。けれども、2003年から勉強を始めて、2005年にはもう作曲していたというから驚く。