イケメン商社マンのイタい自慢話

「留美さんは、どうしてアプリなんかやってるんですか?」

「えっと......コロナでなかなか出会いがなくて......」

「へぇ。出会い、ないんですね」

しかしながら、工藤直彦が口を開いてからものの5分で、留美のテンションは急降下した。

「......出会いが全くないわけじゃないですが、やっぱりコロナのせいで......」

「へぇ。コロナのせいですか」

「............」

彼は爽やかの塊のような好青年にもかかわらず、ひどく会話が下手だった。

悪気はないのだろうか、直彦の言葉は妙に留美の神経をチクチクと刺激する。こんな商社マンは稀ではないだろうか。けれど「アシストが必要な男こそ掘出し物」という徳光の言葉を思い出し、留美はニッコリと笑顔を作った。

「直彦さんは、元カノさんと別れてアプリを始めたんでしたっけ?」

記憶を探り、以前プロフィールにあった情報を元に会話を投げてみる。

「そうなんです。海外駐在も控えてるので、そろそろ結婚しなきゃなと思ってるんですが......もう5年以上も彼女はいません。元カノ以上の女性に出会えないんです」

「そ、そうなんですか......」

突然深刻に語り始めた直彦に少々面食らいながらも、留美は笑顔を崩さず会話を続ける。

「元カノさん、素敵な方だったんですか?」

「そうですね。美人で性格も良かったです。アナウンサーみたいに清楚な雰囲気で親しみやすくて......サークルのマドンナみたいな子でした」

そう嬉々として語る直彦に、留美の顔が引き攣る。初デートの女の前で、これほど楽しそうに元カノの話をする男など見たことがない。

「......じゃあ、どうして別れたの?」

「彼女とは大学の同級生でしたが、社会人になり仕事が忙しくなって......寂しくて耐えられないと言われ別れることになりました。僕は反対したけど......。僕が同期と飲み会に行くだけで寂しかったそうです。本当に純粋な子だったので」

留美はだんだんと苛立ちを隠せなくなる。なぜ仕事後にわざわざリッツにまで足を運び、初対面の男の元カノ自慢を聞かなければならないのか。

「......だったら今からでもヨリを戻したら?」

「無理です。彼女はその後付き合った男性とすぐに電撃婚して、もう子どもも二人いますから」

「へぇ〜、ちなみに彼女はどんな方と結婚したの?」

――ああ、つまんない。適当に終わらせて、サッサと帰ろう。

留美は完全にヤル気をなくし適当に会話を繋いでいたが、次の瞬間、直彦の返答にど肝を抜かれた。