30歳以上の女は、20代の男が狙い目

「動物好きに悪い男はいないだろ。それにこれ、実家の犬らしいじゃないか。家族仲が良いのも結婚には重要だぞ」

先日、留美のアプリ婚活状況をザッとスクリーニングした徳光は、この『ナオ29歳』を強く勧めた。

「それに29歳ってのもポイントが高い」

「流行りの年下?でも私、余裕のある年上の男の方が好きなんだけど......。若い男にがっつくのもオバサン臭いし」

「そういう問題じゃない。ぶっちゃけ、アプリ婚活なら女側も30歳以上の男は足切りした方がいいくらいだよ」

「嘘でしょ?男の人は30歳以上の方が余裕も出て、色気も増すじゃない」

すると徳光は、やれやれとでも言うように頭を振った。

「じゃあ、余裕と色気を増した男がどうなるか分かるか?実際モテ始めて、経験値が上がる。イイ女と付き合えるようになって目も肥える......。それで調子に乗ると、今度はスペック目当ての女たちにウンザリして、さらにはヤリ手の悪女に引っかかって痛い目に遭う。すると定番の『拗らせ男』の出来上がりだ」

徳光はだんだん早口になる。

「そういう男はマジで面倒くさいぞ。スペックが高い代わりにプライドも高い。拗らせの原因は大体が女関係のトラウマだから、その憎しみを好きな女にも向けるし、そもそも女を信用してない。......奴らを結婚させるには、相当な労力が必要になる」

留美は背筋がゾッとした。たしかに、そんな面倒な男に無駄な時間を使う暇はない。

「だから、男も絶対に若い方が良いんだよ。『好きな女を幸せにしたい』ってピュアに思えるから。30過ぎた男なんて、どうしようもねぇよ......」

そのとき、いつも得意げに自論を振りかざす徳光の横顔にわずかに陰りが差した気がした。

「......とくちゃん?どしたの......?」

そもそも徳光は、何故にこれほど男女心理の研究に躍起になっているのだろうか。

幼馴染で中性的な顔立ちをした徳光は留美にとっては完全に恋愛対象外であるが、外資系コンサルティングファーム勤めの彼の評価は世間的には悪くないはずだ。けれど彼の恋愛話は、ここ数年聞いていない。

「いいから留美。お前、とりあえずこの商社マンとデートして来い」

しかし徳光はすぐに表情を切り替え、留美のスマホを奪うと『ナオ29歳』に勝手にメールを返信し、食事に誘ってしまったのだった。