連日東京での感染者は3桁を超え、全国でも感染者最大を記録する自治体が相次ぐなど、全国でも感染が広がっている。そんな中、22日には経済停滞を救おうと「GO TOキャンペーン」が東京を除く地域で実施された。新型コロナの感染拡大の可能性がおおいにある中で、今やらなければならなかったほどの危機的状況というのは、どういう状況なのだろうか。

コロナによる経済危機を1929年の世界恐慌以来の世界的危機だという人もいる。ではそもそも世界恐慌とはなぜどのように起きたのか。現在との共通点は何か。歴史から学ぶことができるのではないだろうか。池上彰さんと増田ユリヤさんによって緊急出版された『コロナ時代の経済危機』(ポプラ新書)より抜粋してお届けする。

コロナショックは
世界恐慌以来の危機になるのか

増田  新型コロナウイルスの感染拡大によって世界恐慌並みの不況、リーマン・ ショック以来の経済の落ち込みなどと言われることが増えています。 

池上 影響がないものなんてない、といった状況です。だから流行がおさまっても、治療薬やワクチンの開発までは、人の動きはどうしても抑え込まれますから、経済の状況は簡単には回復しないでしょう。
象徴的だったのは、2020年4月に起こった史上初の原油のマイナス価格です。 

増田 原油が余って価格が低迷するなんて異常事態です。それだけ世界の経済がつながっているということですよね。 
生産現場だけではなく、農作物の輸出入にも問題が出ています。車や船での輸送も制限が設けられている状態では、ものが行き渡らなくなります。さらに今後、それぞれの国が国内での供給を優先すれば、当然、これは農作物に限った話ではありませんけれど、輸入品の価格がどんどん上がって、それに頼ってきた私たちの生活は苦しくなっていくでしょう。 

池上 世界貿易の減少という事態は、まさに世界恐慌で起こったことですよね。

失業者の数では世界恐慌以上に深刻

増田 とりわけ今回の新型コロナウイルス拡大による経済への影響は、「世界恐慌の再来」だとか「世界恐慌以来」などと表現されています。では、そもそも世界恐慌とはどういうものだったのか。まずは世界史の教科書で振り返ってみましょう。

池上 授業では、1929年の10月24日に株式市場の暴落が起きて大恐慌が始まったと習いますよね。 

1929年10月24日のことを伝えた有名なフレーズのひとつが、エンターテインメント情報で知られる「VARIETY」紙の「WALL ST. LAYS AN EGG.」。卵を産む?と思ってしまうが、「大暴落」という意味を持つという Photo by Getty Images

増田 高校の「世界史B」の教科書では、「1929年10月に、ニューヨー ク株式市場(ウォール街)での株価の暴落から、アメリカ合衆国は空前の恐慌におそわれた。工業生産の急落、企業の倒産、商業・貿易の不振が一挙にすすみ、銀行など金融機関の閉鎖や倒産があいついだ。労働者の4人に1人が失業 し、国民の生活水準は大きく低下した」(『詳細世界史B 改訂版』山川出版社、 2018年)とあります。

池上 失業している人が、「労働者の4人に1人」ですから、たいへんな状況であることはわかります。 

増田 新型コロナ騒動前のアメリカの失業率は、2020年2月に3.5%と半世紀ぶりに低い水準でした。ところが感染が拡大していった4月には、14.7%に達し、5月にはやや改善したとは言うものの見通しはつきにくいです。 

池上 失業の理由がすべて新型コロナウイルスによるものだけではないでしょうけれど、ものすごい落ち込み方ですよね。
 
失業者の数で見ると、1929年から30年代後半まで続いた世界恐慌でおよそ1300万の人が失業したのに対して、今回はたった数ヵ月の間に2000万人以上が仕事を失った状態になっています。2008年のリーマン・ショック以降、10年かけて回復してきた景気の状況が一気に失われてしまいました。 

増田 既に失業者の数では、世界恐慌並みかそれ以上の深刻な状況になっているということですよね。