日本ドラマの「ジェンダー観」、実は劇的にアップデートされつつあった…!

『MIU404』『透明なゆりかご』…
西森 路代 プロフィール

印象的なのは、彼女が犯行に走る前のワンシーンだ。出所して普通の暮らしがしたいと願い就職したにもかかわらず、その企業は図らずも暴力団が経営しており、自身の手取りは14万円しかなく、普通の暮らしを送ることすら叶えられない。家に帰って安売りの総菜を食べていると、テレビには不正をしても捕まることのない政治家の姿が映り、やるせなさをどうすることもできない――。

奇しくもこの回の放送日は、東京女子医大で働く女性看護師の手取りが14万円であるというニュースが話題となっていたその日であった。もちろん、ドラマの台本は数か月前に書かれ、撮影したのも数週間以上前であることは間違いない。野木の作品には、以前からときおりこうした不思議な社会とのリンクが起こるのだが、それは、野木が社会の実感を繊細に追っているからこそのことだろう。

『MIU404』第4話の女性は、自分の命が狙われていることを察知し、横領した1億円で二粒の宝石を買い、ばれないようにぬいぐるみの目に編み込んで恵まれない子供のために寄付をしていた。そのことが彼女の死後に発覚するのだが、そこまで含めて、見事としか言いようのない脚本であった。

何よりスゴいのは、それが単なる感動譚ではなく、この国で生きる多くの女性の実感につながっていることだ。だからこそ、野木のつむぐ物語は、放送後にもずっと心の中に残っていく。

 

『透明なゆりかご』が描いたもの

リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ・2012年)や『失恋ショコラティエ』(フジテレビ・2014年)など、月9の恋愛ドラマを数多く手掛けてきた安達奈緒子も、女性が現代社会で抱いている閉塞感や、社会との接点を描ける脚本家である。

近年は『透明なゆりかご』(NHK・2018年)で、見習い女性看護師(清原果耶)が産婦人科で出会う出来事を丁寧に描いた。原作は同名の漫画で、セリフや物語の運び方はほぼ忠実ながらも、原作とはまた違った落ち解いたトーンで、見ているとこちらの背筋が伸びる感覚がある。「これは真剣に考えないといけないことだ」という張り詰めた空気が醸し出されているのである。