「生産性」と「役に立つ生」に憑かれた、私たちのグロテスクな社会について

生産性に抗するラディカルな生
木澤 佐登志 プロフィール

すると場面が変わり、会議室のような場所で支援団体の職員たちが話し合っている様子が映し出される。支援団体の理事を名乗る、柄の入ったシャツにサングラス、そして角刈りというやや個性的な風貌のその男性は、次のようにカメラに向かって語った。

「とにかく彼らがあきらめる心だけは持たせたくない。あきらめたら、そこで終わってしまう」また、次のようにも語る。「生まれてきた以上は世の中に必要とされている人間だ」「今、命がある限り、必ず君には使命がある」「使命を見出すためにも、自分の人生を力強く歩んでいかないといけない」。

再び画面が切り替わり、Tさんの近況が映し出される。Tさんは、これまで外に出て7つの仕事にチャレンジした。工場でゴミを分別する仕事は、1年半以上続いている、とのこと。彼の月収は十数万円らしい。VTRはTさんがインタビュアーの問いに対して「仕事は楽しい」と笑顔を見せるショットで終わる。アナウンサーは、「努力し続けることがやはり大事なんですね」といったようなことを言ってこの特集を締めくくった。

 

「普通」に見える言葉の内実

以上に映し出されたものを眺めながら、僕は終始いわく言い難い「気味の悪さ」を覚えていた。まず障害者支援団体が出てくる。だが、この支援団体なるものが何者で、どのような組織が運営しているのか、まったく説明がない。インターネットで団体名を検索しても、まったく情報が出てこない。唯一、一般社団法人として法人検索サイトに登録されていることだけは確認できた。

この支援団体のグループホームの内実もよくわからない。番組では7人の知的障害者が共同生活を送っているというが、家賃はどれくらいで、誰がどのように払っているのだろうか。というかそもそも、彼ら障害者が受け取っているはずの諸々の障害年金や生活保護などの福祉は、どう使われているのだろう。

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