提供:花王

毎日使う衣料用洗剤の洗浄成分(界面活性剤)として使える天然油脂は、世界の天然油脂のうち5%ほどしかないということをご存じですか? 限られた原料しか使えないと原料生産地の環境破壊などの問題が深刻化する恐れも。今回は、そんな現状を打開するために研究を重ねてきた「花王マテリアルサイエンス研究所」の主席研究員・坂井隆也博士に、“未来に向けた洗浄剤”について伺いました。

●お話を伺ったのは……
坂井隆也 博士
花王マテリアルサイエンス研究所 主席研究員(素材基盤研究)。界面化学者として界面活性剤の研究一筋27年! 地球にも人にもやさしいサステナブル界面活性剤の開発に心血を注ぎ、チームとともにバイオIOSを誕生させた。

サイエンスの力が生んだ、
花王のサステナブル洗剤

花王マテリアルサイエンス研究所@和歌山

毎日使う衣料用洗剤。その原料について具体的に知っている人はそう多くないだろう。

現在、多くの衣料用洗剤の洗浄成分(界面活性剤)の原料となっているのがアブラヤシからとれる「パーム核油」とココヤシからとれる「ヤシ油」。世界にはほかにも天然油脂が存在するが、その多くはすでに食用に使われているうえ、性質上、衣料用洗剤には不向き。結果、世界の天然油脂のうち5%ほどしか衣料用洗剤に使うことができないという

国連の試算では2030年までに世界人口は約1.1倍に増加するとされています。それに伴い都市化が進み、衣料用洗剤の需要も高まることが考えられます。限られた原料しか使えないと原料生産地の環境破壊や人権問題が深刻化する恐れも。花王では現状を打開するべく研究を重ねてきました」(花王マテリアルサイエンス研究所/坂井隆也さん)

地球環境に配慮しつつも、食用と競合しない洗剤作りを続けるにはどうしたらいいのか。

世界の天然油脂のうち約95%が食用に使われているのですが、その中に性質上食用に向かない油があるんです。例えばアブラヤシの果肉から作られるパーム油には、融点の低いものと高いものがあるのですが、後者は低温で凝固するため食用には適さず、余剰となっていたんです。ならばそれを界面活性剤の原料として使ってはどうかと考えたんです」

ところがそうした油は水に溶けにくく、界面活性剤には不向きだということがわかった。

「その壁を突破したのが界面活性剤のエキスパート研究員たち。『従来の原料以外から界面活性剤は作れない』という常識を覆し、持続可能な原料から高い洗浄力を持った界面活性剤バイオIOSを開発したんです。使い道が限られていた原料を使い、暮らしをより快適にするものを生み出す。バイオIOSは花王の目指すサステナブルな製品作りを体現した、未来に向けた洗浄剤なのです

Q.そもそも界面活性剤って何ですか?
A.油と水をつないで、なじみやすくするモノです。

界面活性剤は界面(物質の境の面)に作用して、性質を変化させる物質の総称です。洗濯をする場合、水に入った界面活性剤はまず水の分子が引き合う力(表面張力)を低下させます。すると衣類に水が染み込みやすくなり、繊維の隅々まで洗剤が浸透します。界面活性剤の分子は頭が丸くて胴体が細いマッチ棒のような形をしているのですが、頭の部分が水になじみやすい『親水基』、軸の部分が油になじみやすい『親油基』と呼ばれています。まず親油基が衣類についた皮脂など油性の汚れに無数に吸着し、その表面を取り囲みます。いっぽう頭にあたる部分の親水基は水の方へと引き寄せられる性質があるので、親油基に包まれた油汚れは、そのままふわ~っと衣類から離されていきます。水中に分散した油汚れは親油基にコーティングされているため衣類に再付着することはなく、水ですすげばきれいに洗い流されます。こうした現象がいたるところで起きることにより、衣類が『洗浄』されるというわけです」

Q.界面活性剤の原料は将来的に不足するそうですけど、それってなんで?
A.原料となる植物性の油の多くは食用に使われているから。でもほかにも問題があってネ……。

現在、界面活性剤に使われているのはおもにパーム核油やヤシ油といった天然油脂です。世界にはそれ以外にもナタネ油や大豆油、ひまわり油など、さまざまな天然油脂が存在しますが、そのほとんどが食用に使われているんです。この先、世界の人口増加とそれに伴う都市化を考えると、食用の油もこれまで以上に必要ですし、かといってこれまで通りの限られた原料だけで洗剤の生産を続けていくのにも限界がある。実際、パーム核油やヤシ油の生産地では大規模農園(プランテーション)を作るための森林破壊などさまざまな問題が深刻化していて、このまま増え続ける洗剤需要に応えていこうとすると環境に大打撃を与えることになります。それを解決するために目をつけたのが、食用油として使われている多くの天然油脂の中で、使い道が限られている部分。同じ原料から作られる油なのですが、その一部は融点が高く、食用に不向きなんです。これなら食用油の供給を保ちつつ、同時に大規模農園がもたらす問題も防げる。すごくサステナブルな原料調達ができるわけです。ただ問題は、それらの油が水に溶けにくいという性質を持っている点。水に溶けないことには洗濯洗剤として使えませんから、この点をクリアしない限り新しい界面活性剤を作ることは非常に困難というわけなんです」

Q.水に溶けづらい油を界面活性剤の原料にするにはどうしたらいいの?
A.サイエンスの力で分子構造を改造しちゃえばいいんです!

水にさえ溶けてくれれば、現在使い道の限られている原料でサステナブルな界面活性剤を作れるのに……。私たちはこの課題をクリアするため、30年ほど試行錯誤してきました。そして、ようやく突破口を見つけました。それは界面活性物質の分子構造を変えるというアイデア。今回目をつけた食用に適さない天然油脂は、そのままだと水に溶けにくいのですが、油なじみはすこぶるいい。理想の界面活性剤は『油なじみも、水なじみも両方いい』というものですから、分子構造に手を加えて、油なじみはそのままに、水なじみの部分だけ改善しようと。いわば『いいとこどり』の理想的な改造方法を編み出したのです。それにより生まれた新しい界面活性剤は、従来より水に溶けやすいため、少ない洗剤量で汚れを落とせ、衣類にも洗剤が残りづらい。低温や高硬度の水にもなじみやすいということで、世界中の国々で高い洗浄力を発揮します。まさに史上最強のスーパー界面活性剤が誕生したというわけなのです!

Q.バイオIOSの誕生で世界はどう変わるの?
A.地球環境を守りながら、質のいい洗剤を十分に作れるようになるんだよ。

「バイオIOSの機能上の革新は先述したとおりですが、加えてお伝えしたいのが『地球にやさしい、サステナブルな界面活性剤である』ということです。いくら洗浄力が高くても、原料を作る段階で現地の生産者や自然環境に負荷を与えているのでは持続可能な生産とはいえません。これまで使い道が限られていた天然油脂を有効活用して作られるバイオIOSは、地球環境にこれ以上の負担をかけず、この先増加するであろう洗剤需要に応えていくことができます。さらに洗浄力はこれまでより高くなっていますから、使用する洗剤量を抑え、すすぎ用の水の量も減らすことができるんです。現在、バイオIOSは衣料用洗剤だけに使用されていますが、界面活性剤は繊維だけでなく、顔、体、髪にも使え、食器、窓、床など、私たちが生きていく上で欠かせない、さまざまなものをきれいに変えてくれます。今後はほかの商品にもバイオIOSを活用することで、よりサステナブルで快適な暮らしを提供していけたらと考えています


洗剤選びからはじめる、地球にやさしい暮らし

左から、アタックZERO(ゼロ)レギュラー〔キャップタイプ〕400g、アタックZERO(ゼロ)レギュラー〔ワンハンドタイプ〕400g、アタックZERO(ゼロ)ドラム式専用〔キャップタイプ〕380g、アタックZERO(ゼロ)ドラム式専用〔ワンハンドタイプ〕380g すべてオープン価格

花王が生んだ次世代の界面活性剤バイオIOS。実用化の第一弾商品としてリリースされたのが衣料用洗たく洗剤「アタックZERO(ゼロ)」だ。油にも水にもなじみやすいバイオIOSは油汚れにしっかり吸着し、素早く水中に分散、洗浄し、落ちにくい汚れも“ゼロへ”。水なじみの良さから衣類への洗剤残りも“ゼロへ”、さらに生乾きの臭いも“ゼロへ”。従来の衣料用洗たく洗剤にはなかった“3つのゼロへ”を実現した。また原料には世界の天然油脂の余剰部分を利用することが可能に。これまで使い道が限られていた天然油脂を有効活用することで原料生産国の環境にも配慮している。高い洗浄力とサステナビリティを両立した“未来を変える衣料用洗たく洗剤”なのだ。

【お問い合わせ】
花王


提供:花王

●情報は、FRaU2020年8月号発売時点のものです。
Illustration:Amigos Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi